最後の奇跡
あちらこちらが、キラキラと光っている。どこよりも凄いイルミネーション。クリスマスツリーだってどこよりも大きい。
そんな幸せそうな空間に微妙な空気が流れる。
ブラックサンタはそのまま僕を引っ張って、サンタの所に行った。
サンタはブラックサンタを見て驚いた顔をし、何を言われるのかわかっているのが、
直ぐに逃げようとしたが、ブラックサンタに掴まった。
見れば見るほどそっくりな2人。違うところがあるとすれば、服装と……表情だ。
「おい! これは一体どうゆうことだ! 何で人間がここにいるんだ!」
ブラックサンタは怒鳴り散らした。サンタの目が泳いでいる。
「えーっと、ジェイクは俺の友達で……、その、手伝ってもらってるんだ」
「はぁ!? ふざけんな! こいつ人間だぞ! さっさと人間の世界に帰らせろ!」
怒鳴り散らすブラックサンタ。誰がどう見たって怒っていることがわかる。サンタは何も言えなくなっている。
その怒鳴り声を聞きつけ、何事だと思い、妖精達が見に来た。
「ジ、ジェイクは友達だからいいんだ!」
サンタも言い返す。僕はその言葉を聞いて嬉しくなった。
「意味わかんねぇ! サンタが1人の人間に肩入れすんな! お前が出来ないなら、俺がやってやる!」
「え、わっ!?」
「ジェイク!!」
ブラックサンタはまた、僕を引っ張り、そのまま走り出した。
サンタが僕の腕を掴もうと手を伸ばしたが、間に合わない。しかも、ブラックサンタ、
足が速くて、追ってきたサンタは中々追いつかない。段々と離れて行く。
何だかそれが、僕は僕自身がクリスマスから離れて行くようで、少し悲しくなった。
でも、僕は抵抗することが出来なかった。サンタの名を呼び、助けを求める事も。
ブラックサンタに引っ張られて行った場所には白い馬がいた。とてもキレイな白い馬。思わず見とれてしまう。
「おい。さっさと乗れよ」
そんな僕をこづくブラックサンタ。やっぱりそっくりなのは外見だけだ。
僕の方が大きいけど、従わなければ何をされるのかわからない。何せ、黒いサンタクロース。
それがどんなものかはわからないけど、僕は素直に従った。
ブラックサンタがヒラリと馬に乗ると、僕はその後ろに乗った。
「行けっ!」
ブラックサンタは僕が乗ったのを確認すると、馬のわき腹を蹴った。
馬は走り出した。初めは地面を走っていたけど、次第にその足は空へと行き、サンタのトナカイのように空を駆ける。
多分、これから行く場所は人間の世界。下を見ると、サンタの住処がどんどん小さくなって行く。
「これからお前をお前の居るべき所に帰す」
ブラックサンタは僕の方を見なかった。やっぱりそうか。行き先は、人間の世界。
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