03月03日


梅の花が咲き始め、ぽかぽかしたようきになるとそれはやってくる。(ぽかぽかしたようきにならないところもあるが)
でも、僕が行ったとこは全部ぽかぽかしてたんだ。
今回はあそこにいく。七段飾りの前に。


何でこの日に行くかって? だって今日はひな祭りじゃないか。
でも、この間七夕の日記を書いたって? でも、今日はまさしくひな祭りなんだよ。
そして、僕は今あの歌を歌っている。


お雛様には色々な顔があるよね。でも、さすがに何人ものお雛様には会えないから1人に会いにいったんだ。もちろん、ここはただの民家で夜勝手に家の中にはいった。見つかったら大変なことになっちゃうね。

「お雛様、お雛様」

僕は雛人形に話しかけた。歌にもあるように、すまし顔で上品に座っている。
暫くすると、ボヤぁとぼんぼりに明かりが灯ると、五人ばやしの笛太鼓が聞こえてきた。

「何?」

そう、どこからか美しい女性のすました声が聞こえてきた。あぁ、この声はお雛様の声だね。

「僕はセト。世界の果てを目指して旅をしているんだ」

僕がそうニコニコ笑っていうと、すまし顔のお雛様も笑ったように見えた。
何だかここはとても、神秘的で幻想的だと思った。でも、居心地が悪いわけじゃない。この雰囲気は似ているんだ。僕が育った村に。大好きなあの、おばあ様の隣に。

「世界の果て……。それは、本当の果て。君はそれを見て、何を思うか……。果てに行くことは大変なことだよ。果てにいくには全てのものがなくならなくてはならないから」

そう言ったのはすまし顔のお内裏様だ。大丈夫、ちゃんと僕はそのことを知ってるよ。だから、今しかないんだというように笑った。
さて、今日はあんまり長いできないね。なんせ、ここは普通の民家だから。
僕がもう行くね、と言うとお雛様に呼び止められた。そして、梅の花を貰った。
うん、何かいいことありそうだ。







随分季節はずれな話だろうと、皆思ったはずだ。
だが、セトの日記はこうなっていた。いや、何故七夕の次にひな祭りがきているのかも謎だ。
セトが何故このように季節はずれの日記を今になって書いたのか、私は不思議でならない。
今回、世界の果てについての記述が少しあった。全てがなくなるというのは、崩壊ということだろう。私はそれを聞いたことがある。
この日付の日記では、セトは形に残るたくさんのものを得た。この日記にはさまっていた梅の花はここで貰ったものなのだろう。だが、ほかに貰ったものは? セトは何に使ったのか?
これは何を意味するのか? 私は気になってしょうがない。



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