虹の先端


ある日、僕はオルゴールを虹の先端に落としたという男の子の話を聞いた。
だから、僕もその虹の先端を探してみることにしたんだ。
虹はすぐ消えてしまう。それは、もうあっという間に消えてしまう。

「雨、空、雲……光」

そう。僕は、そこにいると雲のスキマから光が見えていることに気付いた。
太陽だ。太陽がやっと顔を出した。さて、虹はどこだろう?
僕は太陽の位置を確認しながら、虹を探した。
あった。やっぱりあった。キレイなアーチ型の虹だ。なんだか僕は少し嬉しくなる。

「虹……橋……」

そう。虹は橋みたいだ。僕は虹の先端を目指して、キラキラと雨粒で光る世界の中を走り出した。
もし、虹の先端が見つかったら何をする? まずは、オルゴールを探す。
そして虹の橋を渡り、オルゴールを男の子に帰してあげるんだ。
僕はドキドキしていた。でも、虹は1色ずつだんだんと、消えかかり6色になってしまい、5色になり、ついには藍色の虹1色になってしまった。

「虹が……」

僕は思わず声をあげた。そういえば、こうとも聞いたことがある。
虹は太陽の国の人たちが作ってるって。ってことは、藍色の子以外は帰ってしまったのかな?
なら、何故藍色の子は1人ここに残っているんだろう? 僕は急いで虹の先端に向かった。
その時だった。どこかでキレイなオルゴールの音が聞こえてきた。

「オルゴール?」

音は近かった。僕はオルゴールを探した。オルゴールは意外なところにあった。石と石の間に落ちていたんだ。その石はとても大きく、オルゴールは小さかった。

「あ……!!」

そして、ついに僕は見つけた。虹の先端を。そこには藍色の髪の男の子がいた。その子は僕に笑いかけた。

「オルゴールを見つけてくれてありがとう」

その子がそういうと、僕は何だか虹の中にいるような気がした。
あの、オルゴールの話はほんとうだったんだ。
藍色の子がオルゴールを虹の先端に落としたという話。
オルゴールは持ち主のもとに帰り、空には青い空が広がっていた。







オルゴールと虹の話。私もこの話を聞いたことがある。
私も虹の先端を探したが、私には見つからなかった。だが、セトには見つかったんだ。
この日記は、他の日記とずいぶん違う。この日記は、セトについてもまわりについてもちゃんとかかれていない。
セトは何を考えていたのだろうか?
セト、君の時間はあとどれくらい残っているんだい?
私の時間は、もうそんなに残ってないよ。君はあのときに消えてしまったのかい?



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