月の影


ある日、僕は指輪を月の影に落としたという男の子の話を聞いた。
だから、僕もその月の影を探してみることにしたんだ。
月は空に昇る。そして、沈んでいく。影なんて見たことないっていう人が多いけど、考えてごらん? 雲にだって影はある。夜じゃあ、暗くて影は見えないけど太陽が昇っている時なら見えるかもしれないよ?
だから、こうして僕は青空に昇る白い月を探しているんだ。

「雲、空、光……太陽」

そう。僕がそこにいると、眩しいくらいの太陽が目にはいった。
もう太陽は夕日に変わっているね。さて、月はどこだろう?
僕は空を見ながら月を探した。
あった。やっぱりあった。明るいうちから見える白い月だ。なんだか僕は少し嬉しくなる。

「月……球……」

そう。つきは丸い。そして球だ。うん。この日の月は満月だ。僕は月の影を探して、月の方に向かって走り出した。
もし、月の影が見つかったら何をする? まずは指輪を探す。そして、夜の輝く月を見ながら男の子に指輪を返してあげるんだ。
僕はドキドキしていた。でも、月はどんどんかけていき、半月になり、そして最後には三日月になった。

「月が……」

僕は思わず呟いた。
そういえば、聞いたことがある。月の満ち欠けは月に住むウサギたちによるものだって。月のウサギがこっちにくるときに、月を隠してしまうんだって。ってことは、誰かこっちに遊びに来たのかな? でも、何で遊びにきたんだろう?
僕はいそいで月の影を探した。もしかしたら、全部月が欠けてしまうかもしれないと思って。
その時だった。月の下の地上で何かが光っているのに気がついた。それに、そのこ光っている部分だけまわりよし少し暗い。まるで、影みたいだ。

「指輪?」

光は綺麗だった。僕は光のもとにいき、きっと指輪だろうと思い、指輪を探した。指輪はすぐに見つかった。土の上に落ちていたんだ。少し埋まっていたけどね。
指輪はとても可愛い指輪だった。
「ここが……」

僕は月の影を見つけた。たぶんそうだろうとは思っていたけど、やっぱりそうだった。僕は今まさに月の影の上に立っている。そこには、月のウサギの男の子がいた。男の子は僕に笑いかけた。

「指輪をみつけてくれてありがとう」

その子がそうゆうと、僕は何だか月の世界にいるような気がした。
あの指輪の話は本当だったんだ。
月のウサギの男の子が指輪を落とした話。
指輪は持ち主のもとへとかえっていった。そして、太陽が沈み月の影はわからなくなった。







指輪と月の話。私もこの話を聞いたことがある。
私も月の影を探したが、私には見つからなかった。だが、セトには見つかったんだ。
私はこの話をある村である人から聞いた。
いや、もしかしたらセトから聞いたのかもしれない。
そして彼は……きっと、あの人から聞いたのであろう。セトの旅のきっかけとなる人だ。



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