波の始まり


ある日、僕は波の始まりで髪飾りを落としたという女の子の話を聞いた。
だから、僕も波の始まりを探してみることにしたんだ。
波はどこからか馬のようにやってきて、消えてしまう。高い波に低い波。波にだっていろいろある。
だから、僕はこうして小舟で海に出たんだ。

「青、青、海……島」

そう。僕がそこにいると小さな島を見つけた。植物でかこまれた島だ。無人島かな? 僕はその島にむけて小舟を進めた。
もし、波の始まりをみつけたら何をする? まずは、髪飾りを探す。そして、波に乗り髪飾りを返しに行くんだ。
島の砂浜で、白い何かがうごめいているのがわかる。その砂浜にうちあげられる波はもうなくなっていた。
いや、うちあげられているんじゃない。この島は波が陸にあがっているんだ。だって、陸なのに波がまだ残ってるってことはそうゆうことでしょ?
その陸に波があがると、次の波が海の中に潜っていく。僕はなんだか不思議な気分になる。

「波……馬……?」

島に上陸してみると、そこには水でできた白い馬たちがいた。まるで、波みたいだなと僕は思った。
馬たちは大きさもさまざまで、一列になって海へ潜っていく。そして、波となりこの島へ帰ってきていた。今までいろいろな島を見てきたけど、こんなのは初めて見た。僕は感動していた。

「波の馬……」

僕は思わず声をあげた。前から波は馬みたいだと思っていたけど、本当にそうだったとは。
そういえば聞いたことがある。
どこかの島から馬たちが海を潜り、旅をする。陸が近付くと海の上にあがり、馬たちは海の上を走る。そして、波となり陸にくるが、その直前にまた海に戻っていく。もちろん、誰もちゃんと見ようとしないから気付かない。
その馬たちがいるのが、この島だったんだ。この馬たちが波の正体で、この島が波の始まりの場所なんだ。
僕はいそいで馬たちのところに向かった。その時だった。僕は足元でなにかが光るのを見つけた。

「髪飾り…?」

それは砂の中からちらりと見えていた。僕はそれを掘り起こした。キレイな貝殻と真珠でできた髪飾りだった。それと同時に旅を終えた馬たちが帰ってきた。その背には、青い髪の女の子が乗っていた。その子は僕に笑いかけた。

「髪飾りを見つけてくれてありがとう」

その子がそうゆうと、僕はなんだか海の中にいるような気がした。
あの髪飾りの話は本当だったんだ。
青い髪の女の子が波の始まりで髪飾りを落とした話。
髪飾りは持ち主のもとへ帰って行った。そして、次の馬たちが旅立っていった。







髪飾りと波の始まりの話。私もこの話を聞いたことがある。
私も波の始まりを探したが、私には見つからなかった。だが、セトには見つかったんだ。
私はセトが言っていた気づいていない人たちと同じなのだろうか?
セトと私は違う世界を見ているのだろうか? いや、確かに昔は同じ世界をみていたはず。
いつから、私は気づかなくなってしまったんだ?
また、セトと同じ目線で世界を見たい。



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