空の終わり


ある日、僕は時計を空の終わりに落としたという男の子の話を聞いた。
だから、僕もその空の終わりを探してみることにしたんだ。
空はどこまでも広がっている。きっと、何よりも一番広いと僕は思う。そして、僕は空にのびるといという階段をみつけた。
だから僕はそれをひたすら上っているんだ。

「雲、青、階段……空」

そう。僕はいくつもの雲を追い越し、雲より上に来ていた。でも、まだ空には届かない。僕はひたすらのぼっていく。
何だか上にいけばいくほど青ではなく白になっている気がする。でも、それは気のせいではなく、僕の向うさきは光で満ちていた。

「光……白と青……」

僕はその光を目指した。まるで、天国の入口のようだと僕は思った。
もし、空の終わりが見つかったらどうする? まずは時計を探す。
そして空の終わりから下を見たら男の子に時計を返しに行くんだ。
光は近付くほど眩しくなっていった。僕は光の中に入り、ついにその光をぬけた。

「海……?」

僕は思わず声をあげた。そう。僕の足元には海が広がっていた。僕の上には空はなく、つきぬけるような風がふき、何もなかった。もしかして、この上にあるものが宇宙とか無とかいうものなのかな?
そういえば聞いたことがある。空はいつのまにか海にかわり、上には何もないと。空をめざしているはずなのにいつのまにか海に変わっていると。
僕は空の上にいる。空の終わりにいるんだ! 僕はなんだか嬉しくなった。
その時、空の中からカチカチという音が聞こえた。

「時計?」

僕は空の中に入り、それを拾い上げた。不思議なことに海の中なのに濡れもせず、空の中なのに地上にも落ちなかった。そして、その空の中から白い翼のある男の子が現れた。その子は僕に笑いかけた。

「時計をみつけてくれてありがとう」

その子がそう言うと、全身が空につつまれているような気がした。
時計の話は本当だったんだ。
白い翼のある男の子が時計を落とした話。
時計は持ち主のもとへ帰って行った。そして、僕は階段をおりはじめた。







時計と空の終わり話。私もこの話を聞いたことがある。
私も空の終わりを探したが、私には見つからなかった。だが、セトには見つかったんだ。
そのそも私には、その階段さえ見つからなかった。
懸命に探したんだが、どこにもないんだ。
でも、きっとこれは本当のことなのだろう。だって、セトがそう言っているのだから。



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