崩れる海


“海の島”僕はそう呼ばれている島を見つけた。
そこに住んでいる人々は気づくものは海に出るのをやめ、気付かないものはあいかわらず海で漁をしていた。
海はこんなにも不安定なのに誰も気づかない。見ようともしない。
どこかの海が、崩れなくなっていく。そのたびに海はもろくなっていく。
もし、全部の海が崩れたら? きっと、どこかのホシのように雨がまた海を作っていくんだ。それが再生。

「ねぇ、ねぇ」

僕が海を見ていると空を飛ぶ1羽のカモメに話しかけられた。もちろん、白いカモメだ。

「この間、変な時計を空に見たけど君もみたかい?」

僕はカモメの問いにコクンと頷いた。このカモメもあの時計を見たんだ。
その時だった。海の上を走る白い馬たちの姿が見えなくなった。海の水面は激しく揺れていた。そして、一瞬のうちに海は崩れ去った。音もなく。
被害はここの海だけではない。全部の海が崩れてしまった。

「海が……」

僕は思わずつぶやいた。カモメはもう、どこかに行ってしまっていた。
そして、すぐに少量だけど雨が降り海じゃなくなったところに降り注いだ。
時間に海……消えゆくもの。全ては再生へと向かうため。
僕はあのとき探した雨の行方の洞窟に行った。そこにはまだ女の子がいた。そこから、僕は少し雨をもらい、海だったところに流した。そして、すごく小さな海ができた。
あの白い馬たちもいなくなった。







私は、この海が崩れる瞬間を見ている。なんとも壮絶で言葉にするのは難しい。
世界の終わりだと騒ぐ人もいた。
崩れゆく海……セトはそれを見て新しい海を作った。小さいけど、それはまさしく海で……。
私も海を作ってみた。だけど、私は雨の行方にはたどり着けない。
私はまだセトの世界と違う世界を見ているのか?



 BACK|モドル|>>NEXT