世界の果て


1つ、ぽつんと大地が残った。もちろん、足場は悪い。太陽が今にも沈んでいく。
何もない……海も崩れ、空も割れた。
本当に何もない。大地も消え、時間も狂った。
ここは全ての果て……“世界の果て”
何て説明すればいいだろう? とても、言葉じゃ説明できるものじゃない。
何もない、あるのは大きな夕日だけ。

「おばあ様……」

僕はいつのまにか泣いていた。悲しく何かないのに。それなのに泣いていた。
あぁ……こんなにも“世界の果て”は切なく哀しいものだったなんて。だから、僕は泣いているの?
すべてが失われすべてが生まれる場所。

「あれ…?」

僕は泪がとまらなかった。とめようとしても泪があふれてくる。そして、走馬灯のように今まであったことが頭の中に流れ込んでくる。
おばあ様や村のこと。今まであった人たちのこと……。
僕は空を見上げた。そこには、あの時間を吸い取る時計があった。

「あ……」

時計の針はあのときみたく、すごい早さで動いていた。時計は僕の時間を吸い取っていた。
でも、また別のところにその時計が現れ、その時計は時間を世界に戻しているように見えた。
消えた大地がよみがえる。新しい空が空に、雲ができて雨がふり、海になる。そして、馬たちはその海の上を走る。そして、また時を刻んでいく。

「リク……僕はあのときした約束をちゃんと覚えているよ」

僕はあの村の友達のことを思い出していた。再会を約束した僕の友達。いつも、僕と遊んでいた僕の友達。
そうだ。彼のために日記はここに置いていこう。そうすれば、彼は僕が“世界の果て”に行けたということを知ることができるから。

「また、逢いたいなぁ……。1人は寂しいよ、おばあ様……」

僕はまだ泪がとまらなかった。それは、まるで永遠の別れのような……。
だから、せめて日記を。彼が僕のことを思い出してくれるように…………







日記はここで途切れている。
ご存じのとおり私はこの日記を“世界の果て”で発見した。
と、いっても全て再生したあとだ。そこに、セトはもういなかった。
セトは生きているのか? セト、セト。私も約束を覚えているよ。
私はすっかり大人になってしまったが、忘れた事は一度もなかったよ。
セト、永遠の別れなんかじゃないよね? だって、私たちは約束したんだから。



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