泳げない人魚
今日はうすぐもりだった。
風は吹いてはいなかった。
僕は今、魔界の海にいる。
今日は魔界4日目。
僕は今、人魚や魚人が住むとゆう海の海岸にいる。
僕はそこで、1人の男の子と出会った。
小柄で、男の子らしくない男の子。
今回書くのは、その子のこと。
僕とその子は出会うべきして出会ったのかもしれない。
「何で、人魚なのに泳げないのー?」
「何で、人魚なのにいつも海岸歩いたり、イルカとかに乗ってるのー?」
その子はいつも、そう言われていた。
足が魚な世界で泳げないのはすごく目立つことだよね?
「ん〜……わかんない、何でだろう?」
その子はいつもそう答えていたと教えてくれた。
でも、その子は何故自分が人魚なのに泳げないかを知っていた。
それは、まだその子が小さい時……初めて泳ぎにでた時に怖い目にあったんだ。
それで泳げなくなっちゃったらしい。
泳げないっていっても、ちゃんと海の中で息は出来るし、5メートルくらいなら泳げるらしいけど、それ以上が泳げないんだって教えてくれた。
これは不思議なことじゃないね、世にいうトラウマってやつだね。
僕がその子と会ったとき、その子は魚の尻尾で海岸に座っていた。
「ねぇ! ちょっと聞きたいんだけど、ここって人魚とかがいる海だよね?」
僕はその子にそう話しかけた。
その子は僕がいつからいたのかとかどこから来たのかとかを問い詰めようと思ったらしい。
まあ、これは後から聞いた話だけどね。
「僕はセト。世界の果てを目指して旅をしてるんだ。君は?」
その子は僕の名前を知りたいんじゃなかったのかもしれない。
そして、その子は僕みたいな奇妙な奴に名前を聞かれたくなかったのかもしれない。
それでも僕はにこにこ笑うだけ。
「……フィーネ」
その子はボソッとそう高い声で言った。
「君は人魚? 人間の足にはなれるの?」
「え、うん……なれるけど……」
僕は色んなことをフィーネに聞いた。
人魚には初めてあったからね。
そこで、フィーネは泳げない人魚ってことを聞いた。
どうやらここまでは、イルカの背に乗ってきたらしい。
イルカの背に乗るなんて、ロールケーキみたいにロマンチックだ。
「僕はよく、サメに追いかけられてるから、それが原因で泳げなくなっちゃったのかなって思ってるんだ」
フィーネはそう苦笑した。
確かにサメに襲われるのは怖いね。
「でもね! すっごくいい人がいて、今その人に泳ぎを教わってるの! その人は、位の高い人なんだけどね、僕が夜間違えてその人の部屋に入っちゃったことで、知り合いになれたんだけど。すっごくいい人なの!」
フィーネは笑顔だった。
「そっか、じゃあ君は大丈夫なんだ」
そう言ったのは、僕。
この世には、大丈夫と大丈夫じゃないがある。
僕は大丈夫じゃない方。
僕は今回はいつもより早めに次の世界に発った。
だって、僕は大丈夫じゃないから。
これは、セトが日記を書くようになってから5回目に残したものである。
私はセトみたいに魔界には行けないので、これが本当のことかはわからない。
だが、これは本当のことなのだ。
この日記には「フィーネ」という泳げない人魚が出てくる。
私は彼に会うことは出来ない。
今回の日記も他のと違い短く書いてある。
それは、セトが大丈夫ではないからなのか。
もし、これを読んでいたら「フィーネ」、私に会いに来て欲しい。
何が大丈夫なのかが知りたいのだ。
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