時間旅行〜ロボットの見る夢〜


「すっげー!!!」

だが、それを見ていた男の子が1人。2人は、目をキラキラさせた男の子の前に降り立ってしまったのだ。

「あ」
「げっ」

思い思いの言葉を口にする2人。フィンから離れ、まじまじとその子の顔を見る。

「ん?」

もう一度よく顔を見る。フィンに似ている。髪の色も同じで、目元もそっくりだ。
身長も同じで、フィンはロボットだが、他人の空似とは思えない。

「すっげー!! どうやってやったんだ!? てか、何かお前俺に似てるな!」

にっと笑う男の子。シュウとフィンは顔を見合わせる。この世で似ている人は3人いるというが、フィンはロボットだ。
それに、よく見れば見るほどこの目の前にいる男の子は、フィンに似ているし、雰囲気はどこかシュウにも似ている。

「あれ、でもおかしいな」

シュウは腕を組んで唸る。確かに母親は、フィンは小さな頃の父親に似せて作ったと言っていた。だが、シュウが会おうとしたのは大人の父親だ。考えられる原因は一つ。

「フィンー?」
「あ、はは。ごめん、間違えたかも」

苦笑するフィン。原因は、フィンの年代選択のミス。
ここは、きっと父親の子供時代で、目の前にいるのは父親だろう。

「そんなことより、さっきのどうやったんだ!?」

相変わらず目をキラキラさせて、迫ってくる小さな父親。シュウとフィンはお互い顔を見合わせ、どうしたらいいのかわからなかった。
本来の予定では、こそっと見て帰るだけだったのだが。まさか時代も違うし、見つかってしまうとは。

「帰る?」
「いや、まだ入り口が下がって来てない」

こそっと内緒話をするフィンとシュウ。子供の父親が不思議そうな顔で見ている。

「なーなー、2人は名前なんてーの? 俺はハジメ!」

ハジメは元気な声で答えた。ハジメは手に虫取り網と虫かごを持っているのに、シュウは今更ながら気づいた。

「俺はシュウ。こっちはフィンだよ。おと……ハジメ君は虫取り?」

危うくお父さんと呼んでしまうところだった。フィンが盛大な溜め息を隣でついたのが、何だか少しイラっときた。

「そう! 蝉がたくさんいるんだ! 一緒に行こうぜ!」
「わっ!?」
「おい、シュウ!!」

ハジメは、シュウの腕を?み、引っ張り、走り出す。フィンも急いでその後を追う。
初めて父親と触れ合うシュウは、例え姿が小さくても、どこが嬉しかった。一方で、フィンはどこかつまらなさそうである。むすっとした顔をし、ハジメとシュウの後を追う。
ハジメに連れてこられたのは、神社だった。ミンミンという声や、ジージーという声が聞こえる。シュウの世界では、蝉は動物園にでもいかなければ見られることが出来ない。
あたりを見回し、蝉の声に耳を澄ます。

「ここな! 蝉がいっぱいいるんだ! シュウも手伝ってよ!」
「わっ!?」

ハジメは、またシュウの腕を引っ張り、連れまわす。

「シュウ!」

フィンが声をかけてもシュウは振り返らない。それどころが、今までにフィンが見たこともないような表情をしている。

「シュウ……さっきから、俺のこと見ない……」

その場で立ちすくむフィン。
ハジメは、シュウを連れて社寺林へと消えて行った。姿は見えないが、2人の楽しそうな声が聞こえる。

「俺は、もういらないのかな……」

石畳の階段に座り込む。ロボットなのに、何故目から水が出てくるのか。
それがどこから来るものなのか、フィンにもわからなかった。



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