雫と虹


城の近くまで来ると、なぜ城がキラキラ光っているのかがわかった。城にたくさんの星屑が飾られているんだ。
それに、城の周りをたくさんの箒星が飛んでいる。
遠くでみるよりも綺麗で、僕は一度だけどこかで見たことのあるクリスマスのイルミネーションを思い出した。

「うちの城、こんなに綺麗じゃないよ」

ミンディは城を見て、そう呟いた。空に輝く無数の星と丸くて大きな月の光が、城をいっそう綺麗に幻想的に、神秘的に見せていた。
僕たちは城門まできたけど、やっぱり誰もいなかった。
何より不思議なことは、城門が開いているんだ。普通は閉まっているって兄さんから聞いたことがあるから少し驚いた。

「何で誰もいないんだろう?」

僕たちは城門をくぐり、城の敷地内に入った。

「普通は誰かいるんでしょ?」

僕は二人に問うた。僕の所は、城とかないからよくわからないんだ。

「普通はね。私の所にも確かいたはず。ミンディの所は?」
「うん。俺んとこもいるよ。あ、城の門も鍵が開いてる」

ミンディが城の扉に手をかけると、扉は普通に開いた。これには、僕も随分不用心だなぁと思った。
でも、特に気にせず僕たちは中に入ろうとした。

「待って!! 城の中には入らないで!!」

コカブの声が聞こえた。
僕たちはその声に気を取られ、一歩踏み出そうとしていた足を元の位置に戻し、後ろにいるコカブのことを見た。

「何、あんた来たの。あんなに嫌がってたのに」

レイニィがコカブを見て、機嫌が悪くなった。レイニィはきっと根に持つタイプだ。

「違うんです。確かに嫌だけど、この城は、城の中に足を踏み入れると箒星が襲ってくるんです。 敵の侵入を防ぐために。さっきは、そのことを忘れていました」

コカブはまた下を向いた。

「なるほど。それだったら、人がいない理由もわかるな」

ミンディはコカブの話を聞いて納得した。ミンディはのんきそうにしているけど、僕たちは危なかったんだ。
まぁ、まだ城の中には入っていなかったけど(庭には入っちゃったけど)コカブがここで来てくれなかったら僕たちは箒星に襲われていた。
もし、襲われたら最悪死んでたかもしれない。
そう思うと僕はゾッとした。大袈裟かもしれないけど、あんな箒星に襲われたら無傷では絶対すまない気がするよ。

「城の中にも、そういった仕掛けがあるの?」

レイニィはさっきので、僕と同じように怖くなったのか、コカブに対する態度が優しくなった。コカブはコクンと頷いた。

「でも、僕は大丈夫なんだ。レックスの友達だし、だから僕と一緒に行けば君たちも罠にはひっかからない。だから追ってきたんだ」

コカブの目は真っ直ぐに僕たちのことを見ていた。
多分、コカブの言っていることは本当のことだと思う。だって、こんな嘘言ってもコカブには何の得もないもの。

「僕、王子と友達だから王子に会わせてあげる。僕についてきて下さい。きっと、謁見の間にいると思います」

コカブはそう言い、僕たちの前に出て城の中に入って行った。
僕たちもすぐ後を入って行ったけど、箒星は襲ってはこなかった。



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