雫と虹

「急にどうしたんだろう?」

ミンディの呟く声が聞こえた。鳥たちはまるで、ハミングしているかのようだ。
鳥たちが、ハミングしていると、今度は風車がついてる建物の中から二人の女の人が出てきた。何か、袋を持って。

「さぁ、マエストラーレ。鳥たちに餌をやってちょうだい。私は向こうの鳥たちに餌をあげるわ」
「ミストラス姉さん、わかったわ。あら?」

女の人たちは僕たちに気付いた。この女の人たち、すごくそっくりだ。双子なのかな?

「ミストラル姉さん、見たことのない子たちがいるわ。旅の人かしら?」

マエストラーレと呼ばれていた方が、僕たちに大きく手を振った。
それを見て、僕たち三人は顔を見合わせ、無言の打ち合わせをし、二人の所に行った。

「こんにちは、はじめまして。私はミストラル。こっちは妹のマエストラーレ。皆さんは旅人?」

僕たちが二人の前に来ると、ミストラルと名乗った人がいった。
二人とも、全部一緒で凄くそっくりだ。しゃべっていないと、どっちがどっちだかわからないや。
その間もふわふわの鳥たちはハミングしていた。風にのって、ふわふわと飛んでいるものもいた。

「はい。俺はミンディ。こっちがフィリカ。この子がレイニィです」

ミンディが代表して、僕たちのことを紹介し、ミストラルさんと握手をした。
ちょっとだけ、羨ましかった。だって、僕だって男の子だもん。

「やっぱり旅人さんだったのね。うちにあがって、お茶でも飲んでいって。 マエストラーレ、旅人さんたちを案内してあげて。私は、ルーアハ鳥に餌をあげておくから」
「はい。ミストラル姉さん。さ、皆さんこっちにいらっしゃって下さい」

僕たちはマエストラーレさんの後をついて行った。
ちょうど、お腹も減ってきたし良かった。
僕たちは風車がついている家に案内された。マエストラーレさんはお菓子と紅茶を用意してくれた。

「あの鳥たちは何に使うんですか?」

レイニィが窓からミストラルさんがふわふわの鳥たちに餌をあげるのを見ながら言った。

「ルーアハ鳥のことね? あの鳥たちのふわふわの毛を使って洋服とかを作るのよ。他にタオルとかもね」

マエストラーレさんはそう言って、多分あのふわふわの毛から作られたタオルを持ってきてくれた。

「あ! そうだわ、たくさんあるし、一枚ずつあげるわ」

マエストラーレさんはどこかに行き、タオルを三枚持ってきて、一枚ずつくれた。

「普通のタオルより柔らかいはずよ」

僕たちはそれぞれ貰ったタオルを見て、自分の顔にあててみた。

「ふわふわだ! 凄く気持ちいー!」

まるで、綿毛とか綿みたいだと僕は思った。
横目でチラリと見たけど、ミンディとレイニィも僕と同じことをして、気持ち良さそうにしている。

「マエストラーレさん、ありがとう」
「本当にふわふわだ」

ミンディとレイニィが言った。マエストラーレさんは、にっこり笑った。

「気持ちいいでしょ? そよ風の村のルーアハ鳥は最高級の毛並みを誇るのよ。あのふわふわな毛は最高よね」

いつのまにか、ミストラルさんが居てそう言った。
肩に小さなルーアハ鳥を乗せている。

「あ、可愛い。まだ生まれたばかりですか?」
「そうよ、二週間前に生まれたの」

レイニィが、小さなルーアハ鳥に近寄った。
レイニィが手を出すと、ルーアハ鳥は小さな嘴で、レイニィの手をツンツンしてきた。
何か、凄く可愛いなぁ。ミンディも微笑ましい顔で見ている。やっぱり、動物は可愛いや。

「君たちはどうして旅をしているの?」

ミストラルさんが僕たちに問いながら、椅子に座った。
マエストラーレさんも興味があるのか、僕たちのことを見ている。

「心の雫を探しているんです。雨を取り戻すために」

僕とミンディが口を開く前に、レイニィがはっきりとした口調でそう言った。

「さっきこの村でも見つけました。見せることは出来ませんけど」

と続けた。外の鳥たちはハミングしているのが聞こえ、ミストラルさんが口を開いた。

「北風が行く道を行くと、雪と氷の国につくわ。そこの姫様たちは雨の国の姫様の妹君たちよ。 私たちも、心の雫とか雨の国についてはよくわからないけど、そこの姫様たちなら何か知っていると思うわ。 でも、今すぐ行くのはお勧めしないわね。一晩泊って、明日の朝に出発しなさいな」

ミストラルさんは笑っていた。大人の女性というのもは、こんなにも親切なのだろうか。
僕たちは二人の言葉に甘え、泊っていくことにした。
二人は僕たちが雪と氷の国に行っても寒くないようにって、ルーアハ鳥の毛で作られたコートをくれた。
やっぱり、雪と氷だけあって、寒い所なんだ。
後、お弁当も作ってくれた。洗濯もしてくれた。ご飯に寝床も提供してくれて、僕は少し悪いような気がしてきた。
何かお礼とかした方がいいのかなぁ。何も持ってないけど。


夜、ミンディとレイニィは寝静まったのに、僕は何故かトイレに行きたくなった。
きっと、寝る前にトイレに行かなかったからだ。
ミストラルさんたちはまだ起きていて、リビングから明かりがもれていた。

「心の雫、あの話は本当だったのね」

トイレから帰るとき、ミストラルさんがそう言うのが聞こえた。
別に二人がいるとこのドアが開いているってわけでもないし、僕も開けてない。
なのに聞こえるってことは、ドアとか壁が薄いのかもしれない。それか、声が大きいか。
僕はよく聞こえるようにドアにピッと耳をくっつけた。

「本当に彼の言った通りだった。あの子たちがくるまで信じられなかったわ」

今度はマエストレーレさん。
二人は何か知っているのかな? さっきは、わからないって言ったのに。

「心の雫や雨の姫は、これからどうなってしまうのかしら……」

この後、二人は話すのをやめてしまった。僕も強烈な眠気が来たから部屋に帰った。
でも、このまま心の雫を探していていいのか不安になった。
だって、何で知ってるのに、この二人はわからないって言ったの? それに、誰から聞いたの? 
もしかして、心の雫が砕けたのは偶然じゃないのかもしれない。



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