雫と虹

次の日、僕たちは朝ごはんを御馳走になってから、北風の道を歩いた。
ここに来る時は逆風で大変だったけど、今度は追い風だから、早めにつくかもしれない。
でも、北風だけあってやっぱり寒い。だから、僕たちは初めから貰ったコートを着て行くことにした。
それにしても、昨晩のことは二人に話した方がいいのかな? 僕はそれについてずっと悩んでいた。
悩むぐらいなら言えばいいんだけどね。


暫く歩いていると天気の良かった空が段々と曇ってきた。寒さも増したと思う。
ここで、僕たちはあまりにもお腹がすいて、ミストラルさんたちが用意してくれたお弁当を半分食べた。

「曇ってきたね」

ミンディが空を見上げながら言った。もしかしたら、こんな感じの空を今にも泣き出しそうな空っていうのかな? 
雨雲みたいに黒くないんだけど、泣き出しそうな雲なんだ。全体的に白っぽい空だけど。
でも、僕はたまに白は悲しい色だなって思うときがあるよ。

「ちょっと寒くなってたね。コート着てきてよかったね」

レイニィは、ぶるっと震えた。確かに、コートを着ているのに、少し寒いような気がするけど、気のせいかな? 
いや、気のせいじゃないんだ。だって、耳とか手とかが寒いんだもん。
僕、耳が寒い思いをすると真っ赤になるから嫌なんだよな。
ミンディなんか、コートのボタンを一番上までしめて、首を隠しちゃってる。
普段、太陽の近くにいるからきっと、僕たちよりも寒がりなんだろうなぁ。

「もしかして、そのうち雪とか降ってくるんじゃないのか?」

ミンディが嫌そうな顔をして言った。

「降ってくるでしょうね。なんたって、雪と氷の国にこれから行くんだから」

レイニィの言うとおりだ。絶対、雪も降ってくると思う。レイニィは、手をポケットにつっこんだ。
何か、北風も、さっきよりピューピュー吹いてい気がする。そういえば、本当に寒くなると眠くなるって本当なのかな? 
森にも四季はあるけど、どちらかっていうと、冬は短いからよくわからない。
ここでは、はーってやると白い息が出るのが面白くて、僕はずっとはーってやってた。
だって、森は、こんなにも寒くなることはないもの。
歩いていると、いつのまにか夕方になってしまった。
僕たちは、どこか休める場所がないか探したら、運よく洞窟を見つけた。
奥の方に入ると、風もなく、そんなに寒くなかった。僕たちは、お弁当の半分の半分を食べ、くっついて眠ることにした。




僕たちが、目が覚めたときには朝になっていた。僕たちは、残りの半分の半分のお弁当を食べ、出発した。
これだけじゃ、ちょっと足りなかった。寒さのせいか、ただただ無言で歩いた。
はーってやるのもやめた。だって、息をするたびに白い息が出るんだもの。
ミンディは、コートを着ているにも関わらず、ちょっと震えているようにもみえた。
やっぱり、手袋とかマフラーがないときついよね。僕としては、耳あてもほしい。耳が真っ赤になっちゃうから。

「あ、雪が降ってきた」

暫くして、レイニィがそう言った。細かい細かい粉雪だ。
そうか、雪が降るぐらいだもんね。寒いにきまってる。

「うー、寒い。太陽が恋しい」

ミンディは、貰ったタオルを頭にかぶった。その手があったか! 僕もミンディの真似をして、タオルを頭にかぶった。
ちょっとだけ、暖かくなった。レイニィは、マフラーみたいに首に巻いた。
皆の頭の上にちょっと雪が積もってて、僕はおかしくなった。
そういえば、ミンディはミニチュアの太陽を持ってたけど、使わないのかな? それとも、あれも一回こっきり?


そよ風の村はあんなに天気が良かったのに、とっても不思議。
世界全部が白くなってしまったから、時間もよくわからない。どのくらい歩いたかもわからない。
ただ、積もった雪の上に僕たちの足跡が残っているだけ。でも、その足跡も雪ですぐに見えなくなってしまった。
とにかく、足がヤバくなってきたんだ。
ブーツとかをはいているわけじゃないから、冷たくて冷たくて。しもやけになりそう。
それに、足がちょっと痛くなってきたんだ。結構歩いたって証拠だね。
とにかく、僕たちは歩いたんだ。だんだん寒くなし、吹雪いてきた。

「あいたっ!!」

歩いていると、何かにぶつかった。

「いてっ!」
「あたっ!!」

ミンディもレイニィも気づかずに、ぶつかった。僕はぶつかったものを触った。
平べったくて、横にも広く、高さもある。これは、壁? 白い壁だ。

「ここに壁があるよ!」

確かにそこには壁があった。
すべてが白くてよくわからないけど、確かに壁はあるんだ。ひんやりと冷たい壁が。

「もしかして、この壁の向こうが雪と氷の国?」

レイニィも壁を触っていた。僕は壁が冷たかったからすぐ触るのを止めた。
僕もミンディも、レイニィと同じことを考えていた。だから、僕たちは壁を触りながら歩き、入る場所を探した。
やっぱり、ずっと触っていると冷たい。
そのまま歩いていると、急に壁が途切れる場所があり、僕たちはそこが国に入る入口なんだと確信し、中に入った。

「あれ……?」

雪と氷の国に入ると、不思議なことが起きた。
相変わらず雪は降っているんだけど、さっきまでの雪とは違って吹雪いていないんだ。しんしんと雪が降っているだけ。


雪と氷の国は、星空の国とは違ったキレイさがあった。
全部真っ白で、道の脇には、ヒイラギの木が植えてあった。
川とか水がある所は全部氷で、家々も雪みたいなもので出来ていた。
遠くに見える城は、雪の色をしていなかったから氷で出来ているのかな? 何かクリスタルっぽい感じもするし。

「二人とも、城に行ってみようよ」

レイニィが、氷で出来ている城を指さして言った。
僕たちは頷き、今度は城を目指して歩き始めた。



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