雫と虹

僕たちはまず、城の扉まで行って、レイニィの話しを聞くことにした。海の国は寒いのかな?

「城の庭に、氷の池があるんだって。その中に、穴のあいている場所か何か所があるらしい。 その穴の中でも一番大きな穴に飛び込むんだって。そうすれば、自然と海の国まで連れて行ってくれるみたい。後、息とかは心配ないみたいって言ってたよ」

やっぱり、海の国は水の中なんだ。池から海にどうやって行くかはわからないけど、レイニィの話しを聞いて何だかワクワクしてきたぞ。
あんなに森から出たくないって言ってたこの僕が。外ってこんなにも楽しいんだね。

「とりあえず、その氷の池を探そう」

ミンディの言葉に僕たちは頷き、庭に出て氷の池を探した。


氷の池はすぐに見つかった。と、いうか庭に出たら氷の池が目の前に広がっていた。
結構、広い池で、池じゃなくて湖なんじゃないの? って感じだ。池の周りには、ヒイラギやもみの木が植えてあった。
植物って何か凄いね。こんな寒い中でも生きられるんだから。そんなことを考えながら、僕は氷の池に飛び乗った。

「わっ!!?」

下が氷だからか、ちゃんと立てず、滑ってしまった。けど、どうにか立ってその穴っていうのを探した。
僕は相変わらずツルツルと滑ってたけど、ミンディも滑ってたからちょっと安心した。

「穴、どこにあるんだろう?」

僕たちは別々に穴を探した。
皆で探しているときに、いくつかの穴を発見したけど、全部小さくて入れそうもなかったから、別れて探すことにした。
途中で、ミンディの「いてっ!」っていう声が聞こえたから、きっと転んだんだと思う。その間にも、穴は見つけたんだけど、何だかぱっとしない穴だ。

「皆、穴あったよー!!」

暫く、氷の上を歩いているとミンディの声が聞こえた。ミンディ、さっき転んでたと思いきや、もう見つけたのか。
僕は、転ばないように気をつけてミンディの所に行った。うーん、スケートってこんな感じなのだろうか?

「見つけたって本当ー?」

レイニィの声がした。僕より先にミンディの所に着き、そのすぐ後に僕が着いた。

「お、皆そろったか。穴はここだよ。人一人入れる大きさだから、一番大きいんだと思う」

ミンディはそう言って、足元にある穴を指差した。穴から、池がちゃぷちゃぷしているのが見える。
僕は、ちょっとどんな穴なんだろうって期待してたんだけど、何の変哲もない普通の穴だった。でも、確かに今まで見つけた穴より一番大きいね。

「池はどんなふうになっているのかな? ……うわっ!?」

僕は穴の下に広がる池を覗き込んだ。
そんなとき、足が滑って穴の中に落っこちそうになったけど、どうにか踏ん張った。

「うわっ!」
「フ、フィリカ!」

でも、氷の上だから踏ん張りがきかなかった。
ミンディが僕の腕を掴もうとし、僕もその腕を掴もうとしたんだけど……。

「うわぁあ!!?」

間に合わず、穴の中に真っ逆さまに落ちてしまった。僕って何でこんなにどんくさいんだろう。
二人が僕を呼ぶ声が聞こえる。

「あれ?」

僕はそのまま池の底に落ちるか、浮くかと思った。だけど、何かの水流の流れに乗り、僕は池の中を進んでいた。
それに、何故だかわからないけど、息が出来た。水の中なのに。とっても不思議。
穴の方を見ていると、ミンディとレイニィも飛び込んできた。
水の中は凄く綺麗で、色々な魚たちが泳いでいる。小さい魚に大きな魚。それに、凄く綺麗な魚もいる。


暫くその水流に乗っていると、景色が変わっていた。何ていえばいいんだろう? 魚たちも増え、珊瑚が広がっていた。
あきらかに池の中の景色じゃない。僕は途中で寝ちゃったからどのくらい水流に乗っていたかはわからないけど、かなりの時間水流に乗っていたのかもしれない。
もしかしたら、どこかの川を通って海に出たのかもしれない。だって、この景色は本でみた海の景色だもの。
でも、まだ僕たちは水流で流されていた。そのまま流されていくと、珊瑚でできた門と壁みたいなものが見えてきた。
水流はその門の方に行き、僕たちが近づくと門が開きそのまま水流と一緒に門の中に入った。
その後、すぐに水流に放り出された。草花の代わりか、海草が植えてある。

「穴に入るってこうゆうことだったのか。息が出来るのには驚いたけど」

僕の後ろで放り出されたミンディがそう言った。
たしかに、レイニィが言ってた通り、息が出来るんだ。かなり不思議だよね。
どうやって、水の中で息しているんだろう? それともこの水が特殊なのかな?  そう思いながら、僕たちはルーアハ鳥で作られたコートを脱いで、持っていたリュックサックに仕舞った。
どうにか、入ったな。お弁当がもう入ってないからかな。

「もしかしてあの水流と、この珊瑚で囲まれた壁の中じゃないと、息が出来なくなるんじゃないかな?」

レイニィはふと、思ったのか海の方を見た。
それを聞いて、ミンディが実行に移し、門の外、水流が通っていない所に顔を出し、水の中で息を吐いた。
すぐにミンディの口や鼻からぶはっと泡がでて、急いで門の中に戻った。門の中に戻ったミンディは咳込んでいた。

「うん。レイニィの言うとおりだな」

ミンディは苦しそうだった。



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