雫と虹

僕たちは、道が真っすぐに続いていたからその道を歩いた。びっくりしたのが、街もぜんぶこの珊瑚の壁の中にあったんだ。
珊瑚とか岩とかで出来た家があって、人魚が買い物をしていた。ここの住人は人魚なんだ。そう思うと、僕たちは興奮した。

「見て! 大きな珊瑚のお城が見える!!」

さらに真っすぐ進んだ先に、城があった。いち早く見つけたのはやっぱりレイニィだ。
お城は赤い珊瑚で出来ていて、珊瑚には綺麗なイソギンチャクとかがついている。
城下町とお城が結構近い位置にあったのにも驚いた。僕たちが最初に通った場所は、城下町ではないんだけど (お城は、そのうーんと先にあるんだ。今は城下町にいるよ。)、お城は城下町の一部っていってもおかしくない感じで。
やっぱり、ここにも男の人や女の人の人魚に色々な魚がいた。そういえば、人魚って哺乳類なのかな? クジラとかと同じ尻尾の動きだから哺乳類なのかな? 哺乳類だったら、 海面に上がってきたりするのかな? それとも、僕たちもここでは息が出来るから人魚たちも平気なのかな? よくわからないことが多いけど、人魚はやっぱりいいよね。

「俺さ、人魚って初めて見るんだ」

ミンディが可愛い女の子の人魚を見ながら言った。僕も初めて。海になんか来ないし。レイニィも頷いたから初めてみたい。
そういえば、本とかでは人魚を見たことがあるんだけど、本とかに載っているのは大抵女の人だよね。
どうして、男の人の人魚はあまり本とかに載らないんだろう? だから、僕もすっかり人魚っていうと女の人っていうイメージがついちゃったんだけど。


人魚や街並みを見て歩いていると、僕たちはいつの間にか城門に来ていた。城門は岩みたいなもので出来ていて、海草が巻きついている。

「さぁ、城に入ろうか!」

レイニィ、凄くテンションが上がっているな。僕たちをひっぱって、城の中に入った。
ここの城、門はあるのに扉はないんだね。門を超えたら、何かもう城の中みたい。他の城みたいに庭がないんだ。
しかも、城の中は結構普通な感じ。赤い大きな珊瑚で出来ているんだけど、その珊瑚の凸凹みたいのをうまくつかっていて、あちこちに穴がある。 そこから光が差し込んできて、いい感じ。その大きな珊瑚には小さな珊瑚とかイソギンチャクがくっついて、魚とかもいるんだ。
床も普通の海底って感じで。そうか、泳ぐから床はいらないんだった。見渡す限りでは、階段もなさそうだ。

「今まで、皆謁見の間にいたけど、ここでは謁見の間はどこなんだろう?」

ミンディがあたりをキョロキョロしながら言った。
今までのお城はなんとなく、どこにあるかとかわかったけど、ここではわからない。
上を見てみると、横穴があって、そこが部屋みたいな感じになってるっぽい。しかも、そこから山みたいのも見える。
海底火山とか、どこかの海溝なんだろうか? 光が差し込んでくるし、ここはまだ深海じゃないんだろうな。
それにしても、迷ったわけじゃないのに、辿りつけないって変な感覚。

「ねぇ、もしかしてあそこの珊瑚、他の穴と違って、下が出っ張ってない? 他はただ穴が開いているだけなのに」

上の方を見ていると、僕たち側に出っ張った珊瑚を上の方で見つけた。
出っ張りの上をよく見ようと下がってみると、穴はなく、代わりに扉があった。うん、あやしいね。

「あそこが、謁見の間なのかも。でも、どうやっていくんだ?」

ミンディも僕と同じ位置まで来て、僕と同じ所を見た。
ミンディの言った通り、それが問題。もし、あそこが謁見の間でも、階段もなにもないし、この珊瑚を上れそうもないから、僕たちは辿りつけそうもない。
僕たちは、ちょっと困ってしまった。

「もしかして、泳いでいくんじゃないかな?」

暫く考え込んでいると、レイニィが目の前を泳いでいく綺麗な黄色と黒のシマシマの魚を見て言った。
そういえば、人魚は足がないから、階段を使えない。そうか、レイニィの言うとおりなんだ。レイニィは、一足先に泳ぐ態勢にはいった。 ずっと、歩いたり流されたりしていたけど、ここは水の中なんだから泳げるんだ。

「じゃあ、私が先に行くね」

レイニィはそう言って、地面を強く蹴り、浮かび上がった。けのびの縦バージョンって感じだね。その後は平泳ぎみたいな感じで泳ぎ、あの出っ張りの所まで行き、 出っ張りの上に乗った。

「ここ、やっぱり謁見の間みたい。扉にそう書いてある」

レイニィが扉の方を向き、僕たちに聞こえる声でそう言った。僕とミンディは顔を見合わせ、頷いた。

「じゃあ、俺が先に行くよ」

ミンディもそう言うとレイニィと同じように、けのびをし、足をばたつかせ泳いで行った。
僕はレイニィやミンディのように上手く、けのびが出来ず、あまり上の方には行かなかったんだけど、どうにか泳いで出っ張りの近くまできた。
ミンディが僕を出っ張りの上に引き上げてくれた。僕って、あんまり泳ぎとか得意な方じゃないんだ。ミンディは泳ぐのっ速かったけど。

「じゃあ、開けてみるね」

レイニィは僕たちにそう言うと、僕たちが「うん」とか心の準備をする暇もなく、ドアを三回ノックして開けた。
何だか、レイニィのポニーテールに珊瑚がとてもよく似合っていると思った。



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