雫と虹

僕たちはミンディの案に従い、門に向かった。門に行くまで、一度もカナロア姫には会わなかったけど、門の所にはウミガメが三匹いた。
そうか、カナロア姫はちゃんとウミガメに声をかけていてくれたんだ。ちょっと嬉しくなった。 だけど、ここにウミガメがいるってことは、やっぱり早く行けってことなんだろうなと思い僕たちは、ウミガメの甲羅に乗った。

「ウミガメさん、宜しくね」

ウミガメの背中は固かった。だって、甲羅だもの。ずっと乗っているとおりしが痛くなるかもって、思ったけど口には出さなかった。
ウミガメたちは僕たちを乗せ、優雅に泳ぎ始めた。カメは進むのがゆっくりだったから、あの水流と違って、景色を楽しめた。
海の中の景色は陸の景色と違って幻想的で、これにはさっきから何かを考え込んでいたレイニィも感動の声をあげた。 だって、前から楽しそうな声が聞こえるもの(カメさんは縦になって泳ぎ、ミンディ、レイニィ、僕っていう順番だ)。
ウミガメの下を見てみると、下の方に闇を見つけて、僕はちょっとだけ怖くなってしまった。多分、あの闇の所の下とかが深海っていうやつなんだと思う。

「うわぁ、綺麗だなぁ」

その闇から視線をずらし、横とかを見ると、綺麗な魚が泳いでいた。
僕たちがいる所は、海面に近いわけではない(海面を見ることは出来るけど)みたいだけど、深いってわけでもなさそう。
光が入ってきてキラキラと凄く幻想的。何だかうっとりしちゃう。

「見て! ウバザメがいる!」

レイニィが、海面の方を指さした。僕はその指の方を見た。ミンディも、首の動きで上を見たのがわかった。
レイニィが指差した所には、大きな口を開けた大きな魚が泳いでいたというよりは、浮いていた。ウバザメってことは、 サメの仲間なのかな? 僕はあんまり魚とかには詳しくないんだけど、サメってことはあのサメも凶暴なのかな? あまり、そんな感じには見えないけど。何か憎めない感じ。

「ウバザメがいるってことは、ここは熱帯の海ではないんだね。ウバザメは熱帯の海にはいないから」

レイニィが、どんな表情をしているのかは僕の場所からは見ることができない。
でも、声が凄く楽しそうに弾んでいる。レイニィ、サメが好きなのかな?

「俺はサメより深海に興味があるけどな。でも、深海は水圧が凄いから、行くと潰れちゃうんだけどな」

先頭にいるミンディは後ろを見ながら言った。皆、海に詳しいんだな。僕なんて何も知らない。
どっちかっていると、植物とかの方が知ってるかな。住んでいる場所が森だしね。




海の中での、ウミガメに乗った旅は面白くて新鮮だった。
唯一不満があるとすれば、やっぱりおしりが痛くなったことだ。暫く座りたくないくらいに。
おしりの痛さが限界に来たとき、僕たちは綺麗な見たこともない建物にウミガメたちが向かっているのに気付いた。
凄くキラキラしていて、周りには珊瑚があって、建物自体は金色に輝いていた。
西の海の国は、珊瑚の城で出来ていたけど、あの建物は城の形をしていなく、屋根は瓦屋根っていうのかな? そんな感じのもので出来ていた。

「もしかして、あれが東の海の国?」

レイニィの声が聞こえた。

「国にしても、あの建物しかないぞ? 建物はずいぶんとデカいけど」

ミンディの言うとおり。あの建物はやけに大きい。街の一つや二つははいっちゃいそう。もしかして、あの建物の中に国があるのかな? 
僕たちがそんな話をしている間にも、ウミガメたちは進んでいき、開け放たれている門から中に入った。

「うわー、凄い。こんなの見たことないや」

建物の中は、初めて見るものだらけだった。
その中をウミガメはまっすぐに進んだ。そんな中、僕は左にある道の奥を覗き込んだ。

「見て! あの道の向こうに町みたいのが見える!」

かすかだけど町が見えた。ミンディたちが見たときには、ウミガメたちはもう通り過ぎてしまっていた。
僕が思うに、やっぱりこの建物の中が東の海の国なんだと思う。本当に色々な国があるんだな。    



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