雫と虹


僕はミンディをバケツの置いてある所に案内した。
何だか、ミンディとは友達になれそうな気がする。なれたらいいな。
川について、僕はさっき零しちゃった水を足し、バケツを一つミンディに持ってもらった。
ミンディは軽々とバケツを片手で持った。僕なんかバケツ一つでも両手で持たなきゃふらふらして零しちゃいそうなのに。
僕は、少しミンディのことが羨ましくなった。背も高く、力だってある。何より、一番羨ましいのは髪だ。
僕の髪は、黄色っぽいような髪で(僕は茶色のような黄色だと思ってる)ふわふわしている。
もしかしたら、天然パーマなのかもしれない。色だって、よく解らないし。その点、ミンディは藍色でストレート。すごく羨ましい。

「そういえば、まだ君の名前を聞いていなかったね。何て名前?」

ミンディはニッコリと笑った。いいなぁ、僕は笑うのも少し苦手だから、こんな風に笑ったりできないんだ。
いつか、笑えるようになれたらいいな。

「僕はフリィカ。あんまり、カッコいい名前じゃないけど」

フィリカっていうのは明るいって意味があるって、兄さんが教えてくれた。なのに、僕は全然明るくない。
僕は少し恥ずかしくなった。

「そうか? 良い名前だよ、音の響きも綺麗だし」

ミンディはまた笑った。ミンディって絶対人を褒めるのが上手いと思う。
それに、女の子にもモテそうだ。だって、カッコいいもの。バケツの水だって少しも零してないし。
僕たちは先にバケツを置きに行った。相変わらず、皆忙しそうに植物の世話をしている。

「兄さーん、セージ兄さーん」

僕とミンディはバケツの中の水をあの大きなバケツの中に移し、兄さんを探した。
姿が見えないけど、また木の中にいるのかな? ミンディはキョロキョロと森を見ている。

「おー、どうした。遅かったなー」

鬱蒼とした木からセージ兄さんが降りてきた。やっぱり、兄さんは木の上にいたんだ。結構、近い木だったんだな。
兄さんは不思議そうな顔でミンディのことを見ていた。

「川に行った時に遭ったミンディだよ。彼は太陽の国の人なんだけど、帰れなくなって困っているんだ。だから、聖霊様の所に行って聞いてみようと思っているんだ。いいよね?」

僕は、兄さんにミンディの事を紹介して、事情を話した。きっと、兄さんならいいって言ってくれるはず。
そう言えば、僕がこんな風に誰かの為に自分から動くってあんまりなかったかもしれない。
ミンディは兄さんにペコっと挨拶していた。

「ん、解った。聖霊様に失礼のないようにな」
「うん! ありがとう!」
ほら、僕の言った通りだ。兄さんは話の解る大人なんだ。
他のもっと大人大人した人とは違うんだ。流石、僕の兄さん。

「よーし、じゃあ行こう!」
「おう!」

僕とミンディは一先ず兄さんに別れを告げ、(ミンディはお礼も言ってた)聖霊様の居る所に向かった。



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