雫と虹
エアは本当に案内してくれたんだなと思った。
「ここが、火の国? 本当に?」
歩くと、砂で足が沈んだ。これが砂漠っていうのかな?
にしても、暑い。日焼けしちゃいそう。僕たちはTシャツの上に、あのタオルを羽織った。
「ここが、火の国」
ミンディが呟いた。とりあえず、僕たちはどうすればいいんだろう?
いつも通り城に向かえばいいのかな? にしても、汗が噴き出してくる。
「本当に水がないんだね」
レイニィが近くにあったオアシスを見ながら言った。緑は枯れていて、水も枯れていた。
「さっそく、雨を降らすの?」
ミンディが問うと、レイニィは首を横に振った。
「まだ、降らさないよ。とりあえず、涼しい所はないのー?」
レイニィは、手で自分を扇いでいた。確かにこんな暑さじゃ集中力もへったくれもない。
僕は今すぐにでも雪と氷の国に戻りたくなった。だって、日陰もないんだよ? 冷たい水でも飲みたいよ。
急に、ドカーンという爆発音がした。
「な、何?」
「見て! あれだよ! あの山から煙が上がってる!」
レイニィが驚き、ミンディが音の正体の山を指差した。山は、大きいけど、近くないみたい。
ずっと見ていると、赤いドロドロが流れてきた。
「あれ、火山だ」
ミンディが、そのドロドロを見て言った。こっちにはこなそうだけど、あれが火山に溶岩。何か、初めてみたな。
溶岩は、一体どこに流れて行くんだろう?
「とにかく、町の方に行ってみようぜ」
額にかいた汗を拭いながらミンディが言った。僕たちは頷き、門の中に入った。
町に近づくにつれて、砂漠な感じはなくなってきた。
町に着くと、住民はひらひらと涼しそうな服を着ていたけど、誰も半そでは着ていなかった。何か、アラビアって感じ? お店とか、建物もそんな感じだし。
そんな感じっていうのは、露天みたいな感じってこと。あの丸い屋根が三つとか四つとか見えるあの建物がここの城なんだと思う。ここからじゃ、まだ距離はありそう。
「活気があるね。うわー、水がこんなに高く売られている」
レイニィが、立ち並ぶ露天を見ながら言った。水がツボで売られてるんだ。少量の水が。
水以外にも、すべての物が高く、とても僕たちではどうにもならなそうだった。
「やっぱり、城に行かなきゃどうにもならないかなー。日も落ちてきたみたいだし」
ミンディが空を見上げた。空は赤くなり、夕日が沈みかけていた。僕たちはミンディの言うとおり、城……っていうよりは、宮殿かな? とにかく宮殿に向かった。
いくつかの町を通ったけど、寄り道せずに。寄り道できるほどのお金もない。
だから、暗くなる前にどうにか宮殿に着くころができた。
太陽が沈むと、いっきに寒くなってきた。宮殿のある所は、砂漠ではなく、緑もあった。枯れそうだけど。
それで、城に宮殿に来たのはいいんだけど、門は開いていたんだけど、宮殿に入る扉が開いてなくて、庭で見つけた小屋で僕たちは一晩を明かすことになった。
お腹も減ってきて、しかも夜はものすごく寒くなったからコートを着て、三人でくっついて眠った。
そしたら、皆して何故かお昼頃まで寝てしまって、起きたらものすごくお腹が減っていた。
ミンディがもそもそと小屋の外に出ると、熱気が小屋の中に入ってきた。
この小屋、勝手に使っちゃったけど、何の小屋だったんだろう?
僕たちはコートを脱いでカバンの中に仕舞い、お腹をぐーぐー鳴らせながら、宮殿を目指した。今度は開いているといいなぁ。
「あ、雲が出てる」
小屋を出て空を見上げると、太陽の光が遮られ黒い雲が出ていた。
「ねぇ、レイニィ。あれって、雷雲だよね?」
僕は雲に詳しくない。だから、レイニィに聞いた。
レイニィは雨の国に住んでいるし、僕よりは雲に詳しいと思うんだ。
「うん。あれは雷雲だね。でも、どうしてこんな所雷雲が?」
レイニィは不思議そうに雷雲を見上げた。ミンディも雷雲を見た。
暫く、その雲を見ていたら、ピカっと光り、雲から稲妻が落ちてきた。稲妻は宮殿の方に行き、もの凄い音がした。
「今の、もしかして落ちた?」
扉の向こう側がざわざわと騒がしくなったと思ったら、そこまで人が様子を見に来ていた。いわゆる野次馬ってやつだ。
その騒ぎの声に負けない大きさで、そうミンディが僕たちに問うた。
「行ってみよう!」
レイニィも、落ちたと思ったみたい。相変わらず僕たちの返事を待たずに宮殿の扉を開けてしまった。
今度は扉が開き、僕たちは中に入り、雷が落ちた場所であろう所に向かった。
「私、聞いたことがある。雷は雷の王子が落とすんだけど、その雷には二種類あって、落ちる雷には、雷の国の人が降りてきたって。
雷に乗ってやってきたって。だから、あの雷は、雷の国の人が来たのかも」
レイニィは、複雑そうな顔でそう言った。その台詞を聞き、僕とミンディははっとした。だって、雷の国は、雨の国を手に入れたいと思っている国。
雨の国の姫の恋を邪魔した国。雪と氷の国に現れた奴ら。
心の雫を探しているんだ。じゃあ、心の雫はこの国にもあるってこと? 僕はチラッと雨の雫を見たけど、色は変わってなかった。きっと、心の雫から遠いんだ。
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