雫と虹


突然、女の人の声で起こされた。知らない女の人の声だったけど、姿を見て僕はびっくりした。
あの写真でみたピオッジャ姫そっくりで、オトヒメ様の所で見た夢に出てきた女の人とそっくりだった。多分、同一人物なんだと思う。

「ピ……ピオッジャ姫……?」

起きたとき、僕はびっくりして名前を呼んでしまった。
だって、ピオッジャ姫は眠っているはずじゃ。何で雷の国にいるんだ? これは夢なのか? とも思った。
でも、僕はさっき起きたはずだよね。景色も僕が泊っている部屋だし。だから、夢なはずはないと思ったんだ。ピオッジャ姫はにっこりと笑っていた。

「ここは夢の国よ。夢で知り合った夢の国の姫に頼んであなたの夢に連れてきてもらったの。この間はうまくいかなくて、声が届かなかったみたいなんだけどね」

ピオッジャ姫の声は澄んでいて、とても綺麗な声だった。もちろん、外見も。
僕は少しの間、ピオッジャ姫に見とれていたんだと思う。だけど、どうしてピオッジャ姫はレイニィじゃなくて僕の所に来たんだろう?

「本当はレイニィの所に行こうと思っていたんだけど、あなたの夢以外には入り込めなかったの。 今回のこと、これはね私の我侭なの。それが、皆に迷惑をかけてしまったみたい。わかっていたことなんだけどね。でも、もうすぐでこの私の我侭も終わるわ」

ピオッジャ姫はそう言って、僕に何かを渡してきた。

「これをレイニィに渡して。私が持っているのは、これだけだけど、他の全ては時間の国にあるから」

急に、眠気が襲ってきた。眠くて眠くて、瞼が重くて我慢できなかった。
僕はピオッジャ姫の言葉を聞きながら眠りについた。




次、起きたときピオッジャ姫の姿はなかった。でも、僕の手の中にはいくつかのカケラを握っていた。
きっと、このカケラは雨の結晶なんだと思う。あれは本当に夢だったのかな? 夢だったらなら僕はどうしてカケラを持っているの?  帰ったら聖霊様に聞いてみよう。僕はそう思いながら身支度を整え、レイニィの部屋に行った。

「レイニィ、起きてるー?」

レイニィの部屋をノックすると、眠たそうなレイニィの声がし、ドアを開けてくれた。
その後、すぐにミンディもやってきて、二人にピオッジャ姫のことを話し、カケラをレイニィに渡した。レイニィは、そのカケラをすぐに飲み込んだ。

「でも、何でレイニィの所には入れなかったんだ? 夢の国があるのは知ってるけど。それに、全てはピオッジャ姫の我侭ってどういうことだ?」

ミンディは腕をくみ、考え込んだ。

「我侭っていうのは、わからないけど。私たちの所に入れなかったっていうのはわかる気がする。夢の国に行けるのは限られた人のみで、 世界樹の森は特別な場所だし。聖霊様の影響もあるかもしれない。聖霊様の行けない所はないって聞いたことあるし」

レイニィは「うーん」と唸った。レイニィは本当に色々なことを知ってるなぁ。
それにしても、聖霊様ってそんなに凄い人だったんだ。

「いくら考えても、俺たちじゃわかんないし、朝飯食べに行こうぜー」

ミンディの腹の虫が鳴いた。
レイニィは「そうだね」と苦笑し、僕たちは食堂に朝ごはんを食べに行った。



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