雫と虹


「うわぁ!!?」

音がなった瞬間、僕たちは時計を掴んでいる手から、時計に吸い込まれてしまった。 その感覚が、凄く気持ち悪くて、同時に何だか怖くて僕は目をつぶってしまった。 そのとき、僕は吐き出されるような感覚を感じ取った。この感覚、前に見た夢で感じたことがある。
どすんという衝撃とともにその感覚がなくなり、目を開けてみると、僕は何だか真っ暗な森で、ぐにゃぐにゃした所にしりもちをついた。

「ここ、どこ?」

住んでいる森とのあまりの違いに僕は身震いした。 森にいるのに、地面はぐにゃぐにゃしてて、空もぐにゃぐにゃしてて、ずっと見てると段々歪んでくるんだ。
でも、そこには僕しかいなくて、ミンディも、レイニィも、ユピテル王子の姿すら見えなかった。

「ミンディ! レイニィ! ユピテル王子!」

僕は三人を呼んだ。立ち上がり、歩いて三人を探そうとするんだけど、地面がぐにゃぐにゃで一歩足を前にだすたびに、足が地面の中に沈み、うまく歩けなかった。
何だか、段々怖くなってきて、泣きたくなってきた。

「いた! ユピテル王子! フィリカ、いたよ!」
「え!? ミンディ!?」

僕が泣きそうになっていると、まるでカーテンでも開けるかのように、真っ暗な所からミンディが現れた。ミンディのいる側は明るかった。
僕はミンディに腕をひっぱられ、向こう側へと行った。そこには、レイニィもユピテル王子もいて、普通の森だった。
世界樹の森みたいに澄んだ空気はないけど、普通によくある森で、今度は安心して泣きそうになった。

「フィリカくん。君、途中で手を離してしまっただろう? 言わなかった私も悪いのだが、手を離してしまうと夜の国へと吐き出されてしまうのだ。 夜の国は、危険な場所でね、そこに長時間いると、自らもその闇に巻き込まれ、光を見ると目がつぶれてしまうようになるのだよ。 夜の国は、こちら側とは、まるでカーテンで仕切られているようで、隣り合って存在している国なのだ。 ぐちゃぐちゃしていたり、回っていたり、暗かったりと感覚を歪ませる。そこに住んでいる人もいると聞いたことがあるが、もう闇に巻き込まれてしまって、 出て来られないだろう。頭だって、正気じゃないはずだ。普通なら、あんなとこ住みたいとも、 行きたいとも思わないからね。確か……夕暮れの街から星空の国に行くときに道を間違えると迷い込みやすいと聞いたことがあるよ。 とにかく、フィリカくんが無事でよかったよ。さぁ、時間の国はこっちだよ」

ユピテル王子が申し訳なさそうに、心配そうに僕の方を見て言った。
僕も何だか申し訳なく、話を聞いてまた怖くなった。本当に戻ってこられて良かった。そう安心もした。
けど、ユピテル王子が指差した柱時計を見たときに、怖かったこともふっとび、ドキドキが戻ってきた。でも、何で森にこんな大きな柱時計があるんだろう?

「さて、時間の国に行こう。皆、私についてくるのだよ」

ユピテル王子は、柱時計の柱の部分のふたを開け、振り子の部分を端に寄せながら、まるで部屋の中にでも行くといった感じでその中に入って行った。
その後、覗いて見たけど、ユピテル王子はそこにはいなく、この柱時計はどこかへ繋がっているみたい。
ユピテル王子の次はレイニィが入り、僕、ミンディが入った。時計の中に入り、どこに出るのかなと考える暇もなく、どこかの町に出た。
その後、すぐにミンディが時計の中から出てきた。



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