雫と虹
花畑に行く間、僕たちは色々な話しをした。ミンディは筆のこととか、虹のこととかを教えてくれた。
とっても、有意義な時間だったと思う。だって、ミンディの話は僕の知らない事で、とっても面白いんだもの。
「あ! あれが、聖霊様?」
花畑に来ると、聖霊様はすぐに見つかった。
ミンディでも本当にすぐに見つけられたんだ。
花畑はいくつかあるけど、ここの花畑は、全部がカスミ草だ。そう言えば、聖霊様は白い花が好きだったけ。
聖霊様は花の世話をしていた。
「うん、そうだよ。聖霊様ー!」
僕はミンディの確認の問いに答え、聖霊様を大きな声で呼んだ。
聖霊様はすぐに気づき、僕たちの方に来てくれた。
「どうしたの? あれ、その筆を持っている子は太陽の国の子じゃないの?」
聖霊様は不思議そうにミンディのことを見た。聖霊様の尻尾がゆらゆらと揺れている。
それに、聖霊様の声はとても澄んでいて、綺麗なんだ。聞いていると心地よい。
髪だって、綺麗な金髪でまるで光みたい。それに、やっぱり色々なことを知っている。
だって、ミンディのこと、すぐに解ったもん。僕は解らなかったのに。
「あ、あの! 俺、ミンディと言います。太陽の国への行き方を教えて下さい!」
ミンディは、少し緊張しているのか、早口でそう言い、事情を説明した。
聖霊様はすぐに解ってくれた。
そう言えば、聖霊様の外見は一五歳くらいだって聞いたけど、この森がある頃からずーっとここにいるんだよね。
つい、同じ十代だと思って騙されちゃうよね。
「私もあまり詳しくはないけど、夕暮れの街に行くといいよ。この森に迷い込んだ人は必ず夕暮れの街に行くもの。それに、夕暮れの街で何か、雨が降らない原因が解る気がする」
聖霊様は、少し考えこみ悩んできた。
一体、聖霊様はこうゆう話しをどこから仕入れてくるんだろう。僕は何となくそう思った。
「本当は虹が一番早いんだけど、太陽の国までとなると雨じゃなきゃそんな虹は出来ないし……」
聖霊様はさらにそう続けた。そして、なぜ雨が降らないのかと悩んでいた。
「あ、あの! その、夕暮れの街にはどうやって行けばいいんですか?」
ミンディは必死だった。うん、やっぱり自分の国に今すぐにでも帰りたいよね。両親だって友達だっているもの。
もう少し、ミンディと一緒にいて、色々な話を聞きたかったけど、残念だったな。
「夕暮れの街に行くには、太陽の沈む方向に向かって真っすぐに歩いていくの。何があっても、絶対真っ直ぐに。そして、夕暮れの街には、朝日とともに出発して日没と同時に着かなければならない。つまり、太陽と一緒に進むってことだね。夕暮れの街に着くと、視界が変わるからすぐ解るよ」
聖霊様は昔を懐かしむように言った。
きっと、聖霊様は夕暮れの街に行ったことがあるのだろう。
僕も、その夕暮れの街が一体どんな所か気になったけど、ただ気になっただけでやっぱり森から出たいとは思わなかった。
「えーっと、君はフィリカだっけ?」
僕はぼーっとしてたから、はっとした。と、同時にびっくりした。
だって、あの聖霊様が、僕たちには手の届かない聖霊様が僕に声をかけてきてくれるなんて!
しかも、僕の名前を覚えていてくれてるなんて! 聖霊様は、そんな僕の心が解るのか、青い目を細めてクスっと笑った。
「一人じゃ、寂しいだろうからさ、君も一緒に行ってあげて?もしかしたら、雨が降らない原因が解るかもしれないから」
聖霊様は今度はニッコリ笑った。聖霊様はとても綺麗だ。
僕だって男だし、少しドキドキしちゃう。
森から出るのは、嫌だけど聖霊様の頼みならしょうがないよね。
「は、はい! 解りました!」
僕は元気よく、そう言ったけど、絶対顔が赤かったと思う。
聖霊様は僕の言葉を聞いて、またニッコリと笑った。
チラっとミンディの様子を見てみたんだけど、ミンディも顔が赤かった。
「今日の朝日はもう上がっちゃってるから、明日出発するといいよ」
「ありがとうございます!」
ミンディはすっかり、あがっちゃってた。
だって、それだけ聖霊様は綺麗な人なんだ。こんな人が彼女だったら、凄く幸せだろうなぁ。
まぁ、僕はまだあまり恋愛には興味はないんだけど。
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