雫と虹


僕たちは精霊様に言われた通り、朝日ととともに出発した。そして、言われたとおり、太陽と一緒に進んだ。
と、言っても太陽は早く動いているわけではないから、少しじれったくなった。
でも、僕たちはちゃんと聖霊様の言うとおりにした。
途中、何回か休み、リュックサックに入っていた兄さんが作ってくれたサンドイッチをお昼にミンディと食べたりした。
何だか、とっても一日を無駄にした気分。最後の方はかなりだらけていたけど、僕たちは耐え、太陽と一緒に進んだ。

「あ! 見て!! ミンディ、太陽が!!」

やっと、太陽が真っ赤な夕日に変わった。
そう言えば、お昼とかの太陽は黄色いような感じだけど、沈むころには赤くなるけど、それは何でなんだろう?

「よし! あの夕日を目指していくぞ!」

僕とミンディのテンションはいっきに上がった。さっきまで、あんなにだらけていて、テンションも低かったのに。
僕たちは、夕日とともに進んだ。そして、あんまりにもテンションが上がり、ついにはどこかの青春物のように夕日を目指して走り出した。
そして、日没。急に視界が変わった。いつも見慣れている森が、段々とぼやけて来て、夕日色に染まってきたんだ。
もしかして、これが聖霊様の言っていた視界が変わるってこと?

「フィリカ! 俺、夕日に向かって走っていたはずなのに、夕日の中を走っているよ!」

ミンディも僕と同じ世界を見ているみたい。ミンディの声は感激している声だ。そんな僕も感激しているんだけどね。
それに、ミンディの夕日の中を走っているっていう表現は、良いと思う! だって、それ以外には表現がしようがないもの。


その夕日の中を走っていると、視界はまた変わり、ぼんやりと街が見えてきた。
そして、夕焼けの空がどこまでも続く街に出た。

「ここは……」

ミンディは走るのを止め、あたりをキョロキョロと見渡した。
森の中にいて、夕日の中にいた。そして、今はどこかの街にいる。

「もしかして、ここが聖霊様の言っていた夕暮れの街?」

僕もミンディの隣で、あたりを見渡した。見た感じ、そんなに大きな街ではなく、街の真ん中には大きな噴水がある。
噴水の水には、空の夕焼けの色が映っていて、凄く綺麗だった。

「綺麗な街だね」

ミンディがそう言った。うん、僕もそう思ってたところだよ。

「すみません、ここは夕暮れの街ですか?」

ミンディが通りすがりのおじさんにそう聞いた。おじさんは立派な口髭をはやしている。

「そうだよ、夕暮れの街は初めてかい?」

口髭のおじさんはそういって、笑った。何だか、優しそうなおじさんだ。
そして、やっぱりここが聖霊様の言っていた夕暮れの街なんだ! 僕は何だか嬉しくなった。

「ありがとうございます!」

僕はすっかり、テンションがあがり、元気よくおじさんにお礼を言った。

「おい、フィリカ。色々見て回ろうぜ!」

ミンディもすっかりテンションがあがっている。何か、ちょっと来てよかったかも。



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