大空のむこう


「……あ」
「……へ?」
「……はい?」

扉を開け、部屋の中には……俺たちと同い年くらいの奴が、四つん這いになっていた。
そいつは何故か、上裸だった。
髪をビンビンに立て、日焼けしている肌……南国の人なのかなぁ?
俺たち3人の時間が一瞬だけ、止まったような気がした。

「えっと……」

時間を動かしたのは、サンだった。
サンも俺と同じように混乱してるみたい。
そりゃそうだよね。
寮の部屋に入ろうとしたら、いきなり四つん這い上裸南国少年だもん。
サンは混乱しながらも、部屋に入ろうとした。

「だめ!! 動かないで!!!」

南国少年が、怖い顔でサンを止めた。
サンも、俺もその気迫で、思わず一歩後ろへ下がった。

「悪いけど、コンタクト落としちまったんだ」

南国少年はブツブツと、そう言いながら部屋のあちこちを探した。
かなり目が悪いのか、床に凄く顔を近づけている。
はたから見たら、どこかの文化のドゲザって奴みたいだ。
何か、ベタだなぁと思い、俺はため息をつき下を向いた。
その時俺は、壁際の方に何か……透明な何かを見つけた。
まさか……。

「あ! こら!! 動くな!!」

南国少年は俺を止めようとしたが、俺は止まらなかった。
そして壁際に行き、ガラスみたいに小さな透明なものを丁寧に拾った。

「はい、コンタクト」

そして、南国少年に渡した。

「あ、サンキュ」

南国少年はあっけにとられた顔をして、コンタクトを受け取った。
何か面白い人だなー。

「ドジな奴……」

サンが部屋に入ると同時に、ボソッとそう言うのが聞こえた。
どうやら南国少年には聞こえてないみたい。
何か、面白くなりそうだ!



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