大空のむこう


グランドに降り立つと、俺たちは拍手と歓声で迎えられた。
何だかテレちゃうなぁ。でも、今はそれどころじゃない。

「先生!! コウ先生!」

俺たちは飛行機から降りるとすぐに、先生のところに向かった。

「お。お前たち、よくやったぞ。はなまるだ。離陸から滑空まで完璧だ。セイにサンもよくやったぞ。次も期待しているからな」

先生は笑顔で俺たちのことを褒めてくれた。
俺たちは何だかテレくさい気分になり、えへへとテレ笑いをした。

「えへへ、先生の教えがいいんだよ。って! それどころじゃなくって!! 空から魚が降ってきたんだ!!」

俺は早口で言った。サンとセイがこれが証拠だとでも言うように、飛行機の中からあの魚を持ってきた。
何度見ても見たことの無い魚だ。いったい何の魚だろう?

「これは……天魚だね」

先生がその魚を見て言った。

「テンギョ?」

マヌケな声を出したのはセイだ。俺とサンは聞いた事の無い魚の名前を聞き、ポカンと口を開け、お互い顔を見合わせた。

「そう、天魚。天の魚だよ。ほら、ここのヒレが羽のようになっているだろ?」

ホントだ。何かに似てると思ったら、とびうおに似てるんだ。
いつのまにか、他の生徒もその見たことの無い魚に見入っていた。

「空で何かあったのかな?」

先生は空をみあげた。俺たちも空をみあげた。
空は、変わらず青い空が広がっていた。でも、先生はその青すらも通り越すようなところを見ていた。
その時、授業の終わりを告げる鐘がなった。

「さぁ、これで授業は終わりだ。皆、次の授業があるのだろう? さぁ、行った行った。遅刻しちゃうよ」

先生はそう言い、グランドから追いたて魚を持ってどこかへ行ってしまった。
俺たち3人は先生のあとをつけたが、すぐに見つかってしまった。

「ほら、次の授業に行きなさいな」
「でも、先生……!!」

俺はくいさがらなかった。先生はため息をついた。

「わかった。昼休み、私の部屋へ来なさい」

先生は、どうやら観念したようだ。
俺たちは歓声をあげ、ガッツポーズをし、おとなしく次の授業に行った。



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