大空のむこう


朝が来た。地上にいたときよりも朝日が眩しい。俺たちは朝食(あんまり美味しくなかった)を食べ、この島の一番偉いという人のとこにやってきた。こんなぞろぞろと大勢で行っても平気なのかな? と思ったけど、もう遅いね。

「こんにちは、スイ」

その人が住んでいる家も何だかあんまり地上と変わらない家だった。コウ先生と俺たちはその人の家に入り、椅子に座って編み物をしている女の人に挨拶をした。女の人はコウ先生をじーっと見ていた。

「コウ?」

スイさんという女の人は手をとめ、驚いた顔をしていた。2人は知り合いなのかな?

「知りあいですか?」

大人の中に入れるのはやっぱり大人で、レンさんがそうコウ先生に問うた。因みにレンさんは、俺の素晴らしい方向音痴を、身を持って知っているからここに来る間、どこかに行かないようにとレンさんがずっと俺のことを見ていてくれた。うん、俺は3回ほど迷子になりそうになった。

「私の古い知り合いでね。クウ、君のお父さんのこともこの人は知っているよ」
「え!? 父さんのことを!?」
「あぁ。君のお父さんと私は君が生まれる前に仲間をつれてここに来たことがあるんだ。それから私がホワイト・ブルーの教師になってからはなかなか会えなくてね。休暇を取って君のお父さんのところに行ったんだ。これが君との出会いだったね?」

俺はコクンと頷いた。そうか。やっぱりコウ先生は浮島に来たことがあるんだーと思いながら、俺は父さんのことを思い少し悲しくなかった。

「それより、今空はどうなっているんだい? 天魚が地上に落ちてきたし、この浮島が落ちてくるって言っている学者たちもいる。いったい何が起こっているんだい? 人も全然いないじゃないか」

俺たちは多分地上で言う、商店街みたいなとこを歩いてきたんだと思う。だけど、そこには人が全然いなかった。ほとんどのお店が閉まっていたんだ。まだ朝だし、もしかしたら休みなのかもね? と買い物をしたかった俺とセイとサンでそんなことを話していた。

「そうか。ついに地上にも影響が出たんだね。空は今混乱状態なんだ。城は荒れ、王家は家臣たちの反乱により殺された。その時に跡継ぎの子は行方知れずになった。殺されたとか地上に落ちたとか言うものもいたよ。皆わかっていないんだ。この空を統べることができるのは王家しかいないってことに。そして、それ以来翼のある子たちが生まれなくなった。本来翼は王家のものなんだ。それを私たちは分け与えられていると言ってもいい。あぁ、そう言えばその時に地上人がいたって話だよ。それについてはよく知らないがね。何、ほんの6年前の話さ。壊れるときは一瞬で壊れ、そのまま狂って行くのさ」

スイさんはそう言いながら、再び編み物を始めた。何だが普通の毛糸じゃないみたい。それより、空でそんなことが起こっていただなんて……6年前か……。父さんが帰らなくなった年と一緒だ。

「方法はないんですか?」

そう聞いたのはコウ先生でも、レンさんでもなくセスさんだった。スクがセスさんの服をぎゅっと握っているのが見えた。帽子を深くかぶっているからどんな表情をしているのかは解らなかった。

「方法……そうさね、やっぱり城に行くしかないさね。城に行くには6つの手形が必要だ。それは1つの島に1つあるってことらしい」

スイさんがそう言いながらスクの方を見ると、スクは慌ててセスさんの後ろに隠れた。そのあと、スイさんは毛糸を見ているリンに気付いた。

「ん? これかい?」
「それ、毛糸?」

リンはそう言い、その毛糸みたいなものに触った。お、俺も触りたいっ!!
急に話が変わったからセスさんが少しイライラしているように見えたから触るのはやめておこう。

「これは雲の糸だよ。そうさね、そっちでいう毛糸だね」
「そんなことより、らしいってどうゆうことですか!? どこにあるかわからないんですか!?」

セイが何かを言おうとしていたが、遮ってセスさんが言った。少し怒っている。

「詳しくわからないから、らしいなのさ。島のはずれの船着場、ううん、あんたたちが来たとこじゃないよ。そこにジジイがいるから聞いてみな」

スイさんはそう言い、また編み物を始めた。なんだかRPGだなぁ、と俺は思い、俺たちはそのジジイのとこに向かった。



BACK|モドル|>>NEXT