大空のむこう


手形は何だか地上にはない物質でできているようにみえた。なんだかよくわからないけど、キレイだ!

「これが……」
「城に行く手形!」

サンとセイが口をそろえて言った。リンもレンさんも、皆その手形を見ている。皆感激とか、驚いたりした顔をしているけど、スクの表情は何だかよくわからないといった表情のように俺には見えた。

「これはコウに預けよう。だが、王子の帽子だけの変装はどうかと思うな。せめて色をかえないとな」

ジジイはスクをじろじろ見ながら言った。確かに帽子だととれちゃったとき困るよね。

「でも、髪を染めるものとかあるの?」

リンがわしゃわしゃとスクの頭をなでながら言った。スク、嫌がってるよ。

「俺、スプレータイプのならもっているけど?」
「「「え!!!?」」」

そう言ったのはレンさん。思わず皆声を出して驚いた。何で、レンさんそんなものを持っているんだろう?って、皆そんな表情をしてレンさんを見ている。

「あ、ほら。俺って探偵じゃん? だからそういった変装道具は必需品なんだよー。金だけど、それだとセスちゃんと姉弟ってことにできるな」

レンさん、1人頷きながら鞄からスプレー缶をだし、誰の意見も聞かずにどんどんスクの髪の色を金にかえていった。レンさんって結構自分勝手だよねー。
でも、その意見には皆賛成で、準備が整い次第ジジイの家を後にした。
これからどこに行くって? それはもちろん空船のところ。


俺だけ数歩遅れている。俺は父さんのことを考えていた。俺の父さんとコウ先生は友達で、父さんが“空”に行く前にコウ先生は来た。
俺は父親がどういったものなのかはよく知らないけど、父さんのことは好きだし尊敬している。
あの時父さんは“空”に行くって言って家を出た。俺はそのとき「きっと父さんは“空の果て”を探しに行ったんだ」と思った。そして、見つけ出してそこにいるってずっと信じてた。
あの時“空”って言ったのはきっと、一般の人には浮島のことは知られちゃいけなかったのかもしれない。混乱状態だったし。
俺は昔から“空”に憧れていた。父さんの話が好きだった。でも、前は話を聞くだけで満足していた。
俺が意地でも“空の果て”に行きたいのは、そこに父さんがいると思っているから……?
コウ先生は何か知っているのかな? もし、父さんが生きているのなら……。

「どうした? クウ坊」

どうやら俺はだいぶ考え込んでいたらしい。レンさんが隣に来たことにも気がつかなかった。

「いえ、あの……」
「ソラって人のことか? クウ坊のオヤジさんなんだろ? 何で、それを知ってるのかって顔してるね。俺は探偵だよ? ソラって人の名前が出たときのクウ坊の反応、それと前に言っていただろ? 父親をよく知らないって。そこからの推理さ」

レンさんは得意げに言った。俺、顔に出てたのかな……?

「それにしても、サン君もセイ君もあの話を聞いた途端“空”を救うに目的が変わったらしい。まぁ、俺はあのじいさんが言っていたことが本当か疑っているんだけどな。とくに王家のとこだ。スイさんも言っていたけど、王家しか島を総べることはできない。島を支えられない。ってことは、王家に何か特殊な力があるってことだ。翼の件にしてもな。ってことは、たとえその人が知らないにしても文献を漁れば載っているはずだ。それに、反乱をおこしたのが家臣ならそのことを知らないのはおかしいと思わないかい?」
「え……じゃ……」

レンさんの言っていることは突拍子のないことだった。証拠もない。そして、あのジジイやスイさんが言っていたことを覆す内容だった。
確かに。そのことを家臣たちなら逆に知らないのはおかしい。俺は2人の話を信じて矛盾何かないと思っていたけど、レンさんは探偵のさがで疑ってかかったんだ。

「なぁ、クウ坊。俺と情報を集めないか? コウさんたちには交渉済みだ。城へ行くには情報が少なすぎるってね。情報は最大の武器だ。3日後、あの空船で待ち合わせになった。日没にな。歩きながら俺が疑った理由も教えてやるよ」

レンさんは、そう言い不敵に笑った。



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