大空のむこう


「で? 早く疑った理由ってのを教えなよっ!!」
「うわぁ!? リン!!」

びっくりした。俺とレンさんが話していたらその間からにゅっという感じでリンが出てきた。
いつからいたのか全然気づかなかったよ。小さいから気付かなかったよーとか言うと怒られそうだ。

「何でリン君がいるんだい? コウさんたちについて行ったんじゃないのかい?」

驚いたのはどうやら俺だけではないらしい。レンさんも驚いてますっていうのが顔に表れている。

「うん。そのつもりだったけど、君らがあんまり面白そうな話をしているもんで。俺は仲間のためにも空の秘密を知らなきゃならない。そして、再び海の時代にするっていう約束があるんだ。そのためには、君らと一緒にいた方が面白いと思ったのさ。他の奴らはコウと行っちまったよ」

リンは、そう面白そうに楽しそうに言った。いや、あの……面白いって。そりゃー、リンにとっては人ごとだけどさ。

「で、もう俺の話をしてもいいのかい?」
「あ! はい、どうぞ!」

何俺は慌ててるんだろう。早くレンさんの話を聞きたいってのもあるけど、ダメな俺だなぁ。

「まぁ、だいたいさっき話したが。あのじいさんはあんなに事情に詳しいのにどうしてスクのことは知らなかったんだ? それにあのじいさんの話し方だと、あのことすべてがわずかな研究者たちしか知らないのか? 島を支えられるのは王家だけか、それとも王家の結末、手形のことか? 手形はきっとそのわずかな人たちしか知らないんだろう。島を支えるのは、スイさんが言った皆解っていないっていうのは反乱を起こした人たちは自分たちも島を支えられると思い、反乱をしたことになる。それならまだわかるといえる。だが、そんなことを知らないで反乱を起こすのはほぼ皆無に等しいだろう。王家しか島を支えられない、王家が島を支えている。反乱した人がどっちの解釈をしたかしらないが、これはきっと皆知っていることだと推測される。最後に王家の結末だ。じいさんの言い方だと餓死だと推測されるが、スイさんからは殺されただ。これにいたってはずいぶん違うと思わないか? あえて違う答えを言っている可能性もなくはないが。だが、じいさんについては確実に死んだということは言っていない。あの空気の中誰もが死んだと思っただけだ。餓死寸前になり、スイさんの言うとおり殺された可能性もある」

レンさんはいったい話すのをやめた。確かにレンさんの言うとおりあの2人の話は矛盾が多い気がする。
ジジイは王子が地上にいったことを知っていたのに、どうしてスイさんは知らなかったんだ? それともあえて言わなかったのか? それに、確かにあのジジイの言い方だと、王家と島の関係、王子の行方、王家の末路、手形についてはわずかな人しか知らないとも取れるし、手形のことはわずかな人しかしらないとも取れる。
だって、あのジジイは「これを知っているのは」って言ったんだ。「これ」ってなんだ? それに反乱についてコウ先生が知らなかったのもおかしい。
セスさんは知っているみたいだったけど、どうして父さんは知っていたんだ? それとも単なる偶然?

「もう1つ、スクのことだ。じいさんははっきり地上に預けたと言ったがスクのことは知らない。スイさんは行方知れずと言い、スクのことは知らない。このことから2人はスクの一件には関わっていないことが分かる。聞いた話ってことだ。そして2人ともなぜ家臣が反乱をおこしたのかを言ってない。俺は空のことはあまり知らないが、島と王家の関係を知らずに反乱をおこしていたらもうとっくに島は落ちている気がするんだ。知っているからこそ6年たった今になって地上にも影響が出てきた。それに、荒れてるとか言っていたけど俺にはそんなに荒れてるようには見えない。もしかしたら、あの2人はとっても大切なことを隠しているのかもしれないなぁ」

確かに。俺はレンさんの話を聞いて納得した。そう、何かがおかしい。
いつの間にかリンがいなくなっているのもおかしい。と思ったらなんだか知らないおばちゃんと話しているし。

「何話してたの?」

戻ってきたリンに俺が聞くとリンはにっと笑った。

「レン兄さんの言ってたことはあたり。あのおばちゃん、王家が島を支えていたの知ってたよ。あともう1つ変なことも言ってたけど、俺は頭悪いからよくわからなかったぁー。わかったとすれば、この空の問題は一筋縄ではいかないってことかな」

リンの最後の言葉を聞き、俺は思わず身震いした。



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