大空のむこう
俺とレンさんは、サンシャインに着くまでの間ずっと寝ていた。
とゆーか…やることが寝る以外になかったんだ。
サンシャインは俺の故郷と違い、凄く都会で高層ビルがたくさんあった。
勿論車だって走っている。
「すっげ〜…ビルがいっぱい」
俺はポカンと口を開け、近くにあったビルを見上げた。
空が狭い。
ビルとビルにはさまれて、ビルが竹みたいに空まで伸びていて空が見えない。
俺は少し悲しくなった。
「……クウ坊?」
レンさんが、俺の顔を隣から覗き込んだ。
俺はそんなレンさんの顔を真顔で見つめていた。
「どうした? 車のガスにやられたか?」
レンさんが少し首をかしげた。
俺はフルフルと首を振った。
「大丈夫です。さ、早く仕事に行きましょう!!」
俺はにぱっと笑った。レンさんもつられて笑った。
前からレンさんと背格好が似た人がやってきた。
「そうだな。さっさと片付けるか…。クウ坊、俺の後にしっかりついてくるんだぞ」
俺はコクンと頷いた。そして歩き出した。勿論レンさんの後を追って…。
「クウ坊!! 戻ってどうすんの!!?」
俺の後ろからレンさんの声が聞こえた。
俺は振り返った。
「あれ? レンさん、何でそっちにいるんですか? 今、あっちに…」
俺は後ろにいたレンさんに駅の方を指差した。
「君、違う人について行ってるよ」
レンさんが呆れて言った。
え? でも、レンさんは確かに駅のほうに…。
俺は首をかしげ、もう一度駅の方を見た。俺の前にレンさんと背格好が似た人が歩いてる。
あれ? って……もしかして、俺この人とレンさん間違えてついていっちゃった?
うわっ…すっげー恥ずかしい〜……。
俺は思わず下を向いた。
本物のレンさんが俺の方に走ってきた。
「ほら」
そして右手を差し出してきた。
「君、普通について来いってって言っても違う人について行っちゃうし、普通に何か一本道で迷いそうだしなー。これしか方法がないだろ?」
確かにレンさんのおっしゃる通りです。
いっそ、俺…迷子札作ったほうがいいんじゃないのかって思っちゃうよ。
俺は少し躊躇ったけど、差し出された手を握った。
それからは、殆どレンさんにひっぱられながら歩いた。まさかこの歳で手をつなぐ事になろうとは…。
しかも好きな人とかじゃなくて、俺が迷子にならない為につなぐとは…。
は、恥ずかしい。穴があったら入りたい。
俺はあまりの恥ずかしさに帽子を深く被り、顔が見えないようにした。
周りの人たちには、俺たちがどんな感じで映ってるんだろう…。
「何か、レンさんって父親みたいですね?」
俺はふとその言葉をレンさんに言ってみた。
レンさんは凄い渋い顔をした。
そしてため息をついた。
もしかして…俺、悪い事言っちゃった?
「俺、これでもまだ20代なんだけど…。せめてお兄さんにしておくれ…」
「ス、スミマセン!! 俺、父親ってよく知らないからこんな感じなのかなぁ〜っと思って…」
それから暫く沈黙が続いた。
近くにバス停があった。
ここ、バス停あるんだ…。いいなぁ〜。
俺の故郷にバス停どころかきちんと整備された道路がもない。
「ここからはバスで行こう」
レンさんが、そう言い俺たちはバス停に並んだ。
人はあまりいなかった。
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