TIME LIMIT


涼の頭の中を何かが過ぎる。今までに起きたこと。これが噂に聞く走馬灯というものだろうか。

「うわぁぁああぁぁあ!!!」

涼たちは、時計搭の時計の爆発の爆風で外に吹っ飛ばされ、最上階から落ちていた。 動かない時計なのに爆発するなんて。
カイはきっと、この動かない大きな時計を爆弾に変えた。でなければ、吹っ飛ばされることはない。 ここの時計が動かなくなったのもきっと、カイの仕業だろう。時計搭は見るも無残な姿だ。

「あかん! このままだと、べちゃって、ぐちゃ! や!」

トキが慌てた様子で、急ぎ傘を開く。傘はふわりと風にのった。

「涼、梗! ワイに掴まり!」

トキは傘を持っていない方の手を涼たちに差し伸べたが、涼たちの落下スピードの方が速くて、手を伸ばすが届かない。

「おまっ、遠い!!」

フライパンと梗をしっかりと抱え、何度も手を伸ばすが届かない。その間にも涼たちはどんどん落ちていく。
お互い手を伸ばしてはいるが、掴める距離ではない。

「いった! あかん! 涼、それはあかんで! ワイ、肩くいこんどる!」

涼は必死で手を伸ばし、トキのあの肩から下げている大きな時計を掴んだ。
流石のトキも二人分プラス時計は重いのか、悲鳴をあげた。
だが、可哀想なトキの肩のおかげで涼たちは地面に叩きつけられることなく、ゆっくりと地面に降りることが出来た。 地に足がついた時、涼は感動を覚えた。生きているって素晴らしいと。トキは肩が痛いと、ひんひん泣いた。空はいつのまにか夕焼けに変わっている。

「あーあ。疲れた一日だったなー。結局何もわからなかったし」

崩れた時計搭を見て、涼が大きく伸びをする。
梗が、キョロキョロと周りを見ているのに気がついた。さっきまで泣いていたトキの声が聞こえない。

「涼、トキがいないよ?」

さっきまで一緒にいて、肩が痛いと騒いでいたのに、影も形もない。
涼もあたりを探して見るが気配すらない。

「どーせ、トイレだろ。そんなことより帰ろうぜー」

涼は溜息をつき、腕を頭の後ろで組み歩き出す。梗もその後を追った。
トキは、その後現れることはなかった。持ってきた厄介ごとと一緒に、どこかえ消え去った。 涼は、その代わり新しい目覚まし時計を手に入れた。その時計が爆発することはなかった。



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