TIME LIMIT


家に帰るとトキがいた。ニコニコとうさんくさい笑みを浮かべていた。涼はそんなトキを睨む。

「おい、お前。何で学校に居たんだよ」

火事の理科室から無傷で出てきたトキ。そもそもどこから入ったのかすら謎である。
時計が爆発したのもトキが来てからだ。トキが来る前は何事もなく、平和に過ぎていた。

「何言うてんのー。そんな怖い顔、せんといて」

引きつるトキの笑顔。明らかに顔に出ている。

「お前、何か関係しているのか? してるだろ? お前、一体何者なんだよ」

涼はトキに詰め寄る。不可解なことは、すべてトキが来てから起こった。
見た目も普通じゃないトキ。トキはダラダラと汗をかき、涼を見ようとはしなかった。

「梗を危険な目にあわせて、俺の目覚し時計を壊し、庭に穴をあけた。お前、何様だよ? 話す気がないなら出てけよ」

こんな変な奴を家にいれた自分に腹が立つ。トキはチラリと涼のことを見て、深い溜息をついた。

「わかった。でも、話したら涼も巻き込まれるかもしれへんで? それでもええの?」
「何言ってんだ。今更。もう巻き込まれてるだろ」

間を置かずに答える涼。トキは苦笑した。
苦笑し、大きく深呼吸をし、話始めた。梗がちょうどリビングにやってきて、ソファに座った。

「ワイ、時計屋やねん」
「時計屋? 時計売ってんのか?」
「ちゃうねん」

トキのつっこみ。涼は少しショックを受けた。

「時計屋ちゅーんはな、時間の管理者のことや。信じてくれへんでもええけど、ワイ時計屋やってるトキは不老不死なんやで? 凄いやろ」

トキは自慢げに笑ったが、涼と梗は不信感たっぷりな目で、トキを見た。
いきなりそんなことを言われて信じろという方がムリである。

「んで、ワイな、仕事があって来たんやけど、その仕事ちゅーのが時壊(じかい)屋(や)に狙われている人を助けるってことや。そう、これがワイの仕事や!」

得意げのトキ。涼と梗は顔を見合わせた。半信半疑といった感じだ。

「でな、その時壊屋っちゅーんが、時計を爆弾に変えて、時間を奪う奴や」
「時計を爆弾にって、理科室や涼の部屋のこと?」

梗が話にくいついた。トキはコクコクと頷くが、涼はイマイチ信じられない。
トキはその時壊屋から守る。つまり、トキがいたから、庭に穴が開いただけですんだ? 何だかそれが腑に落ちない。
現にトキは何もやっていない。だが、梗が理科室の話をするということは、理科室でも爆発があったのだろう。と、いうことはトキは梗の命の恩人? 涼は渋い顔をした。

「そしてついにワイは時壊屋の居場所を見つけたんや! それがあの時計搭や!」

ヅカヅカと歩き、窓から時計搭の方向を指差した。
火事になった時計搭。涼と梗はお互い顔を見合わせて、頷く。

「トキ、 今からそこに行くんだろ? 俺たちも連れてけよ!」
「俺も! 仕返ししたい!!」

トキに詰め寄る兄弟。トキは少し困ったような顔をし、溜息をついた。

「しゃーないな。でも、何があってもワイは知らで?」

二人はトキの答えを聞き、ハイタッチした。



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