シャウラ


「あぁ、これ。確か、アルコルが前に持ってた気がする。オリオン、こいつをどこで?」

リゲルはうーんと唸っていたけど、ペテルギウスが直ぐにそう言った。

「シャウラの村でだよ。アルコルって、確か北斗七星のミザルの兄貴だっけ?」
「そうだ。しかも、自分を太陽だと思っているバカな奴。 オリオンは知らないと思うけど、あいつって人の魔力を奪ってすばるから追い出されたんじゃなかったけ?」

考え込むペテルギウス。俺には何が何だかさっぱりだ。
ふと、前を見るとベラトリックスも俺と同じでさっぱりという顔をしている。ベラトリックスは、魔法使いじゃないのか?

「ねぇ、その太陽って言うのは何なの?」

ベラトリックスがそう言うとオリオンとペテルギウスがお互い顔を見合わせ、微妙な顔した。
お互い無言で何か話していたようだけど、ペテルギウスが話し出した。

「太陽って言うのは、自然界に愛された〇等星のことだ。普通の〇等星より、魔力が強く、運もよく、自然の声を聞くことができる。 太陽は、全ての自然に愛される。そのためか、自然が守ってくれるんだ。けがをしないようにと。 それもあってか、太陽は世界一幸せな人と呼ばれているよ。 で、そのアルコルって奴が前に自分は自然の声を聞くことが出来るって騒いでたんだ」

世界一幸せな奴か。何かちょっと羨ましいな。
だけど、幸せって自分が決めることであって、他人が決めることではないよな? 
そう言われているってことがちょっとひっかかるけど……。そういえば、オリオン。オリオンは自然の声を聞けるじゃないか。

家が揺れている気がした。電気の紐とかも揺れていて、窓がガタガタと音を立てている。

「地震?」

ベラトリックスがそう呟いた。珍しいな。地震なんてめったにないのに。
ベラトリックスも感じているってことは気のせいではない。

「……さむい」

ペテルギウスがそう呟いた。何だかペテルギウスの体が少し光っているような? 
そう思って見ていると、大きな音がして窓がバッと開いた。俺たちはびっくりして、思わず窓の方を見た。

「オリオン、何だか怖い……」

リゲルはそう言って、オリオンに抱きついた。リゲルの体も何だか光っているように見える。
オリオンはよしよしって感じで背中を撫でていた。その後は、一瞬だった。

「ペテルギウス! リゲル!! しっかりしろっ!!」

その場に崩れるように倒れこむペテルギウルとリゲル。二人とも、目は開いたままで死んでしまったかのように動かない。
何でこうなった? いつのまにか揺れも収まっていたが、どうしてこうなった? それは俺にはわからないけど、確かに俺は見た。
二人の体が光り、その光が漏れ出し、一直線に開いた窓から空へと吸い込まれていったのを。
全ての光が吸い込まれ、光がやんだ時、二人はぐったりと倒れこんだ。

「オリオン! どうして、二人とも動かないの!?」

ベラトリックスがペテルギウスを揺すっていた。それでも、ペテルギウスは身動き一つしない。

「くそっ! くそっ!! 今のは地震何かじゃない! 二人とも魔力を奪われたんだ! 生命力と 一緒に! くそっ! あの光がそうだったのに。ちくしょう、ちゃんと知っていたはずなのに! ベラトリックス は、ここで二人を見てろ。もしかしたら、ペガサス座の人たちがどうにかしてくれるかもしれない。シャウラは俺と一緒に来い!」

オリオンはドアを開け、外に絨毯を広げた。ベラトリックスはコクンと頷き、俺は急いでオリオンの所へと向かう。
そうか、そうだったのか。あれは魔力だったのか。オリオンは、俺が絨毯に乗ったのを確認すると、絨毯を空へと上昇させた。
ベラトリックスが、俺たちを心配そうに見ていた。



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