シャウラ


絨毯は、凄い勢いで上昇した。もの凄い勢いとスピードで、俺はちょっと気持ち悪くなった。
上昇していると、何だか城のような物が見えてきて、絨毯はその城の前で上昇をやめた。

「すげっ」

俺は城を見て、思わず声に出た。こんな所に城があるなんて。まるで天空の城じゃないか。
色々オリオンに聞きたかったけど、聞ける雰囲気じゃなかった。でも、なんとなくここがどこだかわかったよ。
きっと、ここはオリオンが話してくれたすばるってとこだ。

絨毯は何かに導かれるように飛んだ。
まるで行き先がわかっているかのようで、絨毯は暫く城の間を飛んでいたが、広場に出た所で止まった。
何だか中庭みたいな所で、満天の星空の下、その中庭に誰かいた。男の人と女の人が。ん? あれは……。

「姉ちゃん!?」

俺は思わず声をあげた。絨毯は二人の前でハラリと落ちた。
姉ちゃん、何か困った顔をしているけど、どうしてこんな所にいるんだよ? 姉ちゃんの隣に居る男の人は楽しそうに笑っている。

「アルコル。二人の魔力を返せ」

オリオンは男の人を睨んだ。オリオン、怒っている。で、この人がさっき話しに出てたアルコルって人が。
何か嫌な顔してるな。うすっぺらい笑みを浮かべてるし。

「年上にその口の利き方はないんじゃないか?」
「そんなこと、どうでもいい。ペテルギウルとリゲルの魔力を返せ」

オリオン、凄く怒っている。声は静かな感じだけど、もの凄く怒っている。俺にも伝わってくる。
本当は今にも殴りかかりたいんだと思う。

アルコルは手に持っていた瓶を俺たちに見せた。あれ、この瓶中が光っている。

「二人の魔力はこの中だよ。怒っているってことは、魔力を奪われた人がどうなるか知っているんだね?」

アルコルは相変わらずいやらしく笑っている。何か、こいつ嫌だな。

「知っているさ。魔力を奪うのは、盗むのと同じ。適切な方法でないため、生命力も一緒に奪われる。 それは、俺たち〇等星が魔力を自ら放出した時も同じ」
「そう、その通りだよ。〇等星である君の魔力は奪えない。 でも、君なら直ぐに魔力を取り戻せるだろ? 僕が集めた雨雲や雷雲から逃げ出せた君ならね」

何だって!!? こいつがあの雨を降らせた? 魔法ってそんなことも出来るのか? 

「やっぱりね。ペテルギウスからあのペンはお前のだって聞いた時に予想はついてたよ。あの絵もお前が描いたんだろ?」

オリオンがそう返すと、アルコルは相変わらずうるっぺらい笑みを浮かべている。
こいつ、どっかおかしいんじゃないか? 何で姉ちゃんはこんな薄気味悪い奴と一緒にいるんだよ。

「そうだよ。村の子を守りたいって、彼女に相談を受けてね」
「彼らには何も聞かなかったのか?」
「彼ら?」

アルコルとオリオンの会話。その会話に木々たちが何か言いたいことでもあるのか、ざわめき始め、風も吹き出した。



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