シャウラ
木々の間から光が差し込んでいる。昼だっていうのに森の中は薄暗い。そんなことを考えていると俺の腹がなった。
「ははっ、シャウラ腹なった。腹の具合から見てもう昼だもんな。俺、ホットドック持って来たから一緒に食べようぜ」
オリオンは、ショルダーバックの中に手を突っ込み、ごそごそと漁り、弁当箱を取り出した。
弁当箱って言ってもタッパーみたいので、その中にはホットドックが二つ入っている。オリオンは一つ俺にくれた。ん、美味い。
俺たちは特に何も話もせず、ホットドックを食べた。むしゃむしゃと食べた。
「よーし、じゃあ気を取り直してとんがり屋根を目指しますかー!」
食べ終わった後、オリオンは立ち上がり大きく伸びをした。
俺たちはまたとんがり屋根を目指して歩いた。森の前から見た感じだと、そんなに遠くなさそうに感じたけど、ちょっと遠いんだな。
とんがり屋根。
森の中は静かだ。自然の音しか聞こえない。
オリオンはその音を聞きながら歩いていて、とんがり屋根はもう直ぐだって所で足を止めた。
「どうしたの?」
危うくぶつかりそうになる俺。オリオンは「シィー」と指を立て、小声で話し出した。
「とんがり屋根の前に誰かいるらしいんだ。彼らが教えてくれた。静かに近づいて確認しよう」
そう言い終わると、オリオンは足音を立てないように歩き始めた。
俺もそれに続いたけど、俺には何も聞こえなかったし、あの時オリオンが言ってたのは植物とかも生きているってことじゃないのか?
彼らが言ってたって、オリオンは本当に植物とか自然の声が聞こえるのか? わからなくなってきたぞ。
オリオンの言ったことは本当だった。木の影に隠れてこっそりとんがり屋根を見たけど、オリオンの言う通り誰かいた。
しかも、あれは……姉ちゃんじゃないか!? 自分から近づくなって言っておいて、どういうことなんだ?
「なるほどねーって、シャウラ!」
オリオンの呟きは遠くに聞こえた。俺を呼ぶ声も。
俺は、理不尽な姉ちゃんに何か言ってやろうと木の影から出て、とんがり屋根に向かった。
俺にあんなことを言って、姉ちゃんは思いっきり近づいているではないか。だから文句を言ってやるんだ。
「おい、姉ちゃん! どういうことだよ!」
「シャウラ? それに、オリオンも」
いつのまにか隣にオリオンがいた。姉ちゃんは俺たちのことを見ている。
「オリオン、貴方の仕業ね?」
「ご名答。その小屋には何かあるんだろう? 俺の探しているものかもしれない。だから、そこをどいてくれないかな?」
オリオンはそうニカっと笑った。姉ちゃんはとんがり屋根のドアの前から離れない。
「だめよ。ここには入っちゃいけないの。さぁ、二人とも村に帰りましょう? 今日の夕食はご馳走を作ってあげるわ」
姉ちゃんはそう言いながら、俺たちに近づいてきた。俺たちの腕を掴もうとした瞬間だ。
そんな時、不自然に木々たちがざわめき始めた。
「ちょ、何、これ? 邪魔!」
俺は思わず目を疑った。というよりびっくりした。
だって、いつのまにかくもの巣とか木の葉が……まるで、姉ちゃんの邪魔をするかのようにまとわりついているんだ。
木々たちは怒っているかのようにざわめいている。
「彼らが俺たちの味方をしてくれてる! シャウラ、今がチャンスだ!」
姉ちゃんがくもの巣を取ろうとがんばっていると、オリオンはショルダーバックから金の鍵を取り出し、走り出した。
俺も急いでそれに続いた。
「あ、待ちなさい! 子供は入っちゃいけないのよ!」
オリオンはドアにかけてる南京錠に金の鍵を指し込み、ドアを開けた。
「心配ご無用! 大丈夫さ!」
そう姉ちゃんにニカっと笑うオリオン。俺たちはついにとんがり屋根の中に足を踏み入れた!
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