シャウラ
とんがり屋根は一部屋しかなくて、壁に一枚の絵がかけてあった。何か遊園地とかあって、凄く楽しそう。
「何だ、ただの絵じゃんか。それより、さっきのとか鍵とか何?」
姉ちゃんがあんなに近づけさせたがらなかったとんがり屋根に、これだけしかなくて俺はがっかりした。オリオンは絵を見ていた。
「鍵は、あれは何でも開けられる鍵。さっきのは、彼らが助けてくれたとしか、わからないなぁ」
オリオンはそう言っている間も、絵から目を離さなかった。暫くした後だ。オリオンがこう言った。
「シャウラ、この絵の仕掛けがわかったよ」
オリオンは絵に手を伸ばした。その手は絵の中に入っていった!?
「お、オリオン! それどうなってるんだよ!?」
俺はまた驚いた。これが驚かずにいられるかってんだ。
「だから、こういう仕掛けなんだって。ほら、行くぞ!」
「ちょ、ちょ、ちょま……うわぁぁぁああぁ!?」
オリオンは俺の手を掴み、絵の中に飛び込んだ。
俺は状況がよくわからないのと、怖くて思わず叫び声をあげたけど、足はすぐに地面についた。
「あれ?」
俺は思わずあたりを見渡した。
青い草原に青い空。何かあっちの方には観覧車みたいのが見える。花は咲き乱れ、苦しいこととか何もなさそうで。
そう、楽園だ。ここはそう呼ぶのに相応しい。
「ここが、俺の探していた子供の楽園だ」
俺の隣でオリオンが呟いた。オリオンが探していたのは俺の村じゃなかったんだね。
「よし! シャウラ、さっそく探検しよう!」
オリオンはニカっと笑い、ショルダーバックから絨毯を引っ張り出し、宙に浮かせた。俺たちは絨毯に飛び乗り、探検に出かけた。
「うわー、オリオン。ここ、本当に絵の中かよ?」
俺は下を見た。川とか流れていて絵の中とは思えない。
「あ! オリオン! 見てよ。人がいるよ!」
下を見ていた俺の目に入ってきたのは、子供だった。子供が川沿いを歩いている。あれは、本物の人? それとも、描かれた人?
「俺、聞いたことがあるよ。子供の楽園は大人のために作られたって。楽園に行くと大人は子供に戻るんだ」
オリオンも下を見た。
「じゃあ、あの子たちは本当は大人なの? でも、子供にしか見えない」
仕草だって子供にしか見えない。大体、子供に戻るってどういうことだ? 体が縮むのか?
「そりゃ、そうだ。子供に戻るってことは体が縮むってことじゃない。時が戻るってことだ。
ここには巻き戻しの魔法がかかってたからね」
巻き戻しの魔法? 魔法がかかってたってことかな? 俺、あんまり魔法とか信じてなかったけど、どうやら信じるしかなさそうだよな。
空飛ぶ絨毯とか、絵の中に入ったりとか。
「さっき、シャムが言ってた入っちゃいけないっていうのは、子供が入ると時が戻って消えちゃうからだと思うよ。
おっと、そんな顔しなくても、消えないから大丈夫だよ。実際、消えてないだろ?」
オリオンは、ニカっと笑った。笑い事じゃないよ。消えちゃうとかって、確かに消えてないけど。
てか、俺うっかり入らなくて良かったな。俺一人だったら絶対消えてた。でも、何で今の俺たちは消えてないんだ?
「今の俺たちはどうして消えないんだ?」
今消えてないってことは、大丈夫なんだろうけど、でも明確な答えが欲しい。
だってさ、大丈夫だとは思うけど、わからないだろ? 明確な答えがあったほうが安心して探検できる。
「そんなの簡単だよ。この魔法は俺には効かないってこと。物に魔法をかけ、人にかかるようにするのにはそれなりの条件があってね。
俺たちはその条件を満たしていないんだ」
「何か、よくわからないけど……」
オリオンはそう言ったけど、本当によくわからない。オリオンはうーんと唸り、説明を始めた。
何か、絨毯とか魔法のチケット? とかは初めから魔力があるとか、この絵は魔力がこもった物で描かれ、
巻き戻しの魔法がかかったとか。
で、そういった魔力がこもったもので描かれたものとか作られたものは、魔力を持った人には効かないとか。
色々説明してくれたけど、やっぱりよくわからなかった。
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