シャウラ


オリオンは「もしかしたら、村の大人たちもここにいるかも」って言ったんだ。
それを聞いて、俺ははっとした。オリオンの言った通りなら、大人が急に消えたのも説明がつく。
もし、それだったら姉ちゃんはこのことを知っていた? 知っていたなら何で隠してたんだ?  姉ちゃんはきっと何かを知っていて隠している。これは絶対だ。

「お、シャウラ。今度は男の子と女の子が歩いているぞ。手なんか繋いで、大人だったときは恋人とかだったのかなー?」

オリオンが下を見て、クスっと笑った。俺も下を見ると、花畑を俺たちと同い年くらいの子供が歩いている。
ん? あの二人……どこかで見たような……?

「オリオン! 下に降りて! 俺、あの二人見覚えがある!」
「へ? いいぜ、わかった」

絨毯がゆっくりと降りる。俺は、絨毯が地面につく前に、絨毯から飛び降り、二人の子供の前に行った。

「え、何この人?」

急のことだったから女の子が驚き、男の子の後ろの隠れた。
俺はそんなの気にせずに、ジロジロと二人の顔を見た。
やっぱりだ。思った通りだ。どこか面影が残っているし、昔写真を見せてもらったことがある。オリオンの言う通りだったんだ。

「父さん、母さん!」

やっと見つけた。ずっと消えたと思った人。俺はついに両親を見つけた。こんな近くにいたんだ。やっと、両親に会えた。
何だか凄く懐かしくて嬉しい。だけど、そんな俺とは裏腹に子供の父さんが俺を睨んだ。

「何だ、君は! 彼女が怖がっているじゃないか!」
「え、何だって俺だよ。父さん、シャウラだよ!」
「シャウラ何て知らないわ。行きましょう」

父さんから返ってきた言葉に驚いていると、母さんが父さんの腕を引っ張り逃げるように走っていった。

「待って! 俺だよ、シャウラだよ!!」
「シャウラ、やめろ!」

二人の後を追おうとすると、オリオンに止められた。

「二人の時間は巻き戻ってるんだ! 本当にシャウラの両親だとしても、シャウラのことを知らないのは当然さ」

そうだった。本当の子供に戻っているんだった。でも、そうだとしても信じたくない。
父さんと母さんが俺のことを知らないだなんて。だったら、まだあの二人は俺の間違えの方が断然いいけど、あの二人は本物なんだ。
でも、でも……! 考えれば考えるほど、悔しくなって、苦しくなって、涙が止まらなくなった。

「シャウラ……大丈夫だよ。ここを出れば、大人たちは大人に戻って、シャウラのことだって覚えているよ。 だから、泣くなよ。泣いちゃだめだ」

オリオンはそう俺を慰めてくれた。確かにオリオンの言う通りだ。今は泣く所じゃない。俺はゴシゴシと袖で涙を拭いた。

「よし! じゃあ、俺の探し物をして、さっさとここを出るか」

オリオンはニカっと笑い、俺たちは絨毯に乗って再び、この楽園の上を飛んだ。遊園地の上を、公園の上を。
それを見ても俺たちは下には降りなかったけど、とんがり屋根と同じような小屋が出てきた時、絨毯はゆっくりと降りていった。



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