シャウラ

「ここは?」

俺がそう言った時には、オリオンは絨毯をしまい、とんがり屋根の鍵を開けていた。

「ここは出口。そして、俺の探しているものがある」

オリオンが中に入ると、俺も後に続いた。外も中も、まるっきりとんがり屋根と一緒だな。
同じように壁に絵がかけてあって、その絵には俺の村が描かれてあった。
あと、絵の前に机が置いてあって、何か変なものが置いてある。何か、金の羽ペンに懐中時計が巻きついている変なペン。
オリオンはそれを取り、ショルダーバックに入れた。
ほんの一瞬だけ、泣いている小さなオリオンが見えた気がした。いや、気のせいだ。

「俺はこれを探していたんだ。絵を描いたペンであり、巻き戻りの元凶」

泣いているオリオンは見えなくなった。俺はふるふると頭をふった。
あれは幻覚。気のせいだ。オリオンは不思議そうに俺のことを見てたけど、特に何も言わなかった。

「さぁ、シャウラ。あれが絵の出口だ。それに、このとんがり屋根の鍵も開けたから、大人たちは出てくると思うよ」

オリオンは真っ直ぐ俺の村が描かれてある絵を指差した。
そうか。大人たちが戻ってくるってことは、村も前の姿になるってことだ。小さい子たちも腹いっぱい食べることが出来る。
そう思いながら、俺とオリオンは絵に飛び込み、子供の楽園を後にした。



俺たちは元来たとんがり屋根の中に戻ってきていた。絵が遊園地の絵だから、大丈夫だろう。
外に出て見ると、絵の中は昼だったのに夜になっていた。だいぶ、絵の中にいたんだな。
そんなことより、俺が今知りたいのは……。

「オリオン! オリオンって一体何者なんだ!?」

俺はオリオンを見た。オリオンはいきなりのことだったから、少し驚いていた。
でも、俺は聞きたい。何としても! だって、俺は今までこんな不思議なこと経験したことがないのに、 オリオンと出会ってから既に何度も不思議な体験をしてるんだ。
だから、オリオンが何者なのか知りたくてたまらない!

「うおっ! 何だよー、びっくりするじゃんか。何者かって聞かれても、魔法が使える普通の人だけど」

オリオンはそう言って頬をかいた。いや、魔法が使えるって時点で普通じゃないだろ! っと、俺は思ったけど口には出さなかった。

「魔法はあまり、一般の人には知られてないからな。 すばるに導かれれば、誰でも使えるようにはなるけど、すばる自体が知られていないしな……。 むしろ、すばるには導かれない方が……」

最後の方はオリオンの独り言か? 明らかに俺に向けられた言葉ではないように思えた。
確かに俺は魔法なんて見たことなかったし、御伽噺だけの世界かと思ってた。でも、実際にあるんだ。魔法は。何だかワクワクする。



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