シャウラ


「オリオン、すばるって言うのは何なんだ?」
「すばるとは、世界に絶望した人が導かれる魔法学校のことよ」

話しながら森の中を歩いていると聞き覚えのある声がした。姉ちゃんの声だ。姉ちゃんが木の影から出てきた。
もう、くもの巣とか木の葉はまとわりついていない。

「やっぱりね。あんた、すばるの人間だったのね。 絵の中に入ると子供がどうなるか知っているみたいだったし、そうだと思ってたよ」

オリオンは姉ちゃんにそう言った。不適に笑って。

「そうね。貴方も、オリオンもそうでしょ? それにしても対した魔力の持ち主だわ。 あの絵に魅せられず、魔法も効かず、それがシャウラにまで影響するなんて。階級的には〇等星って所かしら?」
「当たり。でも、元すばるな」

二人は睨みあい、緊迫した空気が流れた。俺には二人が何を言っているのかさっぱりわからん。
頭は混乱してくるし、大体何で姉ちゃんは知ってるんだよ!?

「ねぇ、俺にはさっぱり何だけど。〇等星とかって何?」

二人が俺を見た。俺は何だかものすごーく気まづくなった。何か、もっと上手い言い方はなかったもんかな。
これじゃあ、俺が空気読めない人だ。でも、一人だけ話しについていけないのは嫌だ。

「あ、ごめんごめん。シャウラはまだすばるについて知らなかったよな。 すばるっていうのは、まぁ大体シャムが言ったようなものだ。 で、すばるには階級があってさ、魔力の強い順から一等星、二等星、三等星、四等星って言うんだ。 〇等星っていうのは、魔力を生まれつき持ってる奴のことだよ。一等星から四等星は、 魔力をすばるから貰う……いや、最終的には返すから、借りるっていうのかな。 借りた人の精神状態とか年齢に応じて魔力を借りる量が違ってくるんだ。多少性格も関係しているって噂だけどね」

オリオンがそう説明してくれけど、何かよくわからなかったな。

「えっと、じゃあオリオンは生まれつき魔力があったってこと?」
「そういうことになるね」
「そんなことは、どうでもいいわ。盗んだものを返して頂戴」

俺がオリオンと話していると、姉ちゃんが口をはさんできた。
取り合えずオリオンが生まれながらの魔法使いってことがわかったけど、 姉ちゃんは? 姉ちゃん、すばるっていうのを知ってたってことは導かれたってこと? ってことは、姉ちゃんも魔法使い?

「盗んだ? 嫌だな。あれは頼まれたのさ。あれを回収してこいって。所で、あの絵はシャムが描いたの?」

オリオンは何だか余裕そう。そういうオリオンに比べて姉ちゃんは何だか眉間に皺がよっている。
姉ちゃんは知っているのだろうか、皺は一度刻まれると取れないってことを。

「違うわ」

姉ちゃんはオリオンの問いにそう答えた。やっぱり姉ちゃんは知っていたんだ。
知っていて教えてくれなかった。何か少し、悔しい。

「じゃあ、誰があんなことをしたんだよ! 何で父さんたちは あそこにいるんだよ? 何で知ってたなら姉ちゃんは教えてくれなかったんだよ!」

俺は姉ちゃんにくってかかった。姉ちゃんは俺に教えてくれなかった。弟なのに。
もう、意味がわからないよ。何で父さんたちはあそこにいるんだよ。
誰かに閉じ込められたのか? それとも、自分で入ったのか? でも、どうして姉ちゃんが知っているんだよ。
知ってるってことは、姉ちゃんは関わっていたってことだろ?

「姉ちゃんは知ってたんだろ? 何で何も教えてくれなかったんだよ!」

姉ちゃんは俺がそう訴えても、黙っていた。それが、俺には腹立たしくて悔しくて、もう何だかわからなくて……。

「何とか言ってくれよ! どうして黙っているんだよ!」

夜の森に俺の声が響いた。お願いだ、姉ちゃん。何か言って。俺たちは姉弟だろ? 



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