見捨てられた勇者
世界は闇で覆われていた。その闇は魔王の城に行けば行くほど強くなっていく。
銀色の髪を持つトーヤは今までの事を思い出していた。両親が魔物に殺された日。父は強い剣士で、母は才能ある魔法使いだった。
そのせいか、トーヤは少し魔法が使える。だが、そんな両親はトーヤの目の前でトーヤを魔物から守って死んだ。それからトーヤは叔父の家で暮らすようになった。
四つ下の従弟が頭を過る。結局、従弟には自分と同じ目に合わせてしまった。
最年少の勇者として注目を集め、ついにここまで来たのだ。
自分を守ってくれていた叔父は死に、残りの仲間は後二人。だがそんな二人は魔王の城を目前にした所で逃げ出した。
「キース、チャコ!」
共にピンチを乗り越えた仲間達は恐怖に負け、逃げ出した。伸ばした右手を、二人が取ることはなかった。
頭に被っているバンダナは魔法使いのチャコがくれたもの。羽織っているマントは、少しは勇者らしくと剣士のキースがくれたもの。
一回り近く年が離れていたが共に苦楽を乗り越えてきた。それなのにトーヤは見捨てられた。
「仲間を見捨てるとは哀れよのう」
不気味な低い声が響く。目の前に現れたのは
「グレイ」
魔王だった。
それから暫くしたころだ。魔王が死んだとの噂がたった。が、トーヤは戻って来なかった。キースとチャコだけが戻ってきた。
二人は勇者のパーティーとして今後の生活が保障された。二人は勇者の残したことをやりに行くと言って旅立ったのである。
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