カミカクシ


畑と森に囲まれた道を歩いている時だ。そんな有人の足が、はたと止まった。

「秋竹くん?」

晴太が、有人を見ると、有人は、真っ直ぐ前を指差した。 その指の先を追うと、離れた場所に真斗がいた。こちらに気づいているのか、いないのか。数人の男子生徒で、お喋りをしている。

「めんどくせーなー」

有人が、いつもとは違う、低い声で呟いた。

「うわっ!?」

ぐいっ、と晴太は有人に手を引かれた。手を引かれ、そのまま森の中へ。

「秋竹くん!?」
「ごめん! こっちから、行こう! 近道なんだ!」

晴太は、有人に引っ張られながら森の中を進む。人が通ったあとはあるが、足元が悪い。ちょいちょい枝に引っかかる。有人は慣れているのかすいすい進む。
ふと、妙なところに出た。

「あれ?」

有人の足が止まる。晴太も合わせて止まる。2人の目の前には、鳥居。鳥居の先には参道が続いている。

「神社?」

そう呟いた晴太は、有人を見た。有人も不思議そうな顔をしている。
森の中に、神社。しかも、それなりに大きい神社だ。

「えーっと、どうする?」

有人が晴太を見る。お互い顔を見合わせて、再び鳥居へと目を向ける。

「どうするって、言われても……」

晴太は、困ったように顔をしかめる。不思議と、鳥居の奥を見ていると、誰かに呼ばれている気がした。ここに、一体何があるというのか。

「君たち、こんなところでどうしたんだい?」
「うひゃ!?」

突然、背後から肩を叩かれ、男の声がした。有人は、驚いたのかすっとんきょうな声をあげた。晴太も、声はあげなかったが、びくりと、肩が震えた。

「ごめん、ごめん。驚かせてしまったね」

振り向くと、穏やかな笑顔を見せる、男がいた。おじさんというには、若すぎる。だが、青年と言うには年を取りすぎている。

「えっとぉ……、誰ですか?」

視線を泳がせ、ボソリと有人が問うた。男は、にこにこと笑っている。

「私は、ここの神社を管理しているものだよ」

優しそうな表情を浮かべる男。管理というのは、持ち主ということなのか、神主と言うことなのか。

「こんな所にあるから、随分前から寂れてしまってね。でも、大事な神様をお祀りしている場所なんだ。 きちんと、管理しておかないと。この神社の神様は鬼神だから、怒らせたりすると、人を食べてしまうという伝承も残っているんだ」

晴太と有人は、顔を見合わせた。きっと、同じことを考えている。男はそんな2人を見て、くすりと笑った。

「そうだよ。こんな事件が起こってるしね。高齢の方は鬼の祟りとか言ってるんだろう? もし、それが本当なら、 きちんとお祀りしないといけないからね。さて、森の外まで送っていくよ」

鳥居から離れ、男は2人を手招きする。まだ、日があるのに、森の中だからか、どこか薄暗い。
2人は顔を見合わせ、男についていく。晴太は、くん、と後ろから誰かに引っ張られたような感覚を感じた。だが、振り向いても、そこには誰も居なかった。



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