2.協奏曲


死にゆくヒトは、何を思い死んでゆくのか?
残されたヒトは、何を思い生きてゆくのか?
また、赤い太陽が昇る。


ボクは、博士との約束をはたしている。
博士は欲の強いヒトだ。


「よくやった。こいつも、お前にかかれば瞬殺だったな」

血で染まった部屋にボクは立っている。
床には、切り裂かれた軍人の偉いヒトたちが、折り重なるように血まみれで横たわっている。
博士は、軍を内部から壊そうとしている。
全てを壊そうとしている。
博士はただ、楽しんでいるだけなんだ。

「私が神になる日も近いな」

博士の野望。
それは、この世界の頂点に立つ事。
だから、邪魔な軍を壊滅させなければならない。
ボクを作る時に関わった人を殺さなきゃならない。
博士には、ボクが必要だから…。
だから、ボクはあのヒトも切り裂かなければならない。

「あの4人組から、あいつを見つけたと連絡が入った。次のターゲットを殺しに行くより、そっちを優先しよう。もしかしたらあいつを先に、殺せるかもしれないからな」

博士は先に部屋を出た。
ボクもそれに続いた。

「博士、行く前にシャワーを浴びてきてもいいですか?」

血に染まったボクの体。
こんな体で、この綺麗な自然の中何て歩きたくない。
自然が、けがれてしまうから…。

「ああ。早くしろよ」

博士はボクの方を見ないで言った。
博士は、ボクの事を生物とは思っていない。
ただの便利な兵器としか思っていないだろう。


シャワーを浴びたあと、ボクと博士はある町に向かった。
大きな時計棟がある綺麗な町だった。

「やぁ、久しぶりだね」

博士は、時計棟の前にいて、黒いマントを被った4人組に挨拶した。

「久しぶり。博士」

男の子が笑って答えた。その子は、刀を持っていた。

「やぁ、ナツキ。あいつを見つけたって本当かい?」

博士も笑って言った。

「それについては、ホシマルの方が良くしってるよ」

ナツキと呼ばれた子は、大きな鎌を持っていない方の男のヒトを見た。

「たいぶ此処から近いとこに居ましたよ。ヒミコと一緒に。今、俺の部下が追っていると思います」

ホシマルが答えた。

「これから私たちは何をすればいいんです?あいつを見つける事しかご命令をうけてませんが…」

弓を持った女のヒトが答えた。
博士は笑った。

「いや、君たちはもう何もしなくていい。君たちの任務はもう終わりだ」

また、この大地が血で染まる。
はじめは、ただ愛してほしかった。
はじめは、ただ博士にほめてもらいたかった。
でも、もういい。
何も要らない。

だから…あのヒトだけは殺したくない…。



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