3.遁走曲


人は、弱いから立ち向かえる。
人は、哀しいから優しくなれる。


俺の目が覚めた時はもうあいつの姿はなかった。


「いたぞー!! あそこだ!!」

俺は何故か追われている。
何で追われてるかなんて俺も知らない。
俺は、裏道に逃げ込んだ。

「これじゃあまるで…サカモトリョーマじゃん!! 俺が何したってんだ? ただの旅人だぞ」

ずっと走っていたから息がきれていた。

「あいつ…どこいったんだ? 手分けして探すぞ!!」

さっきの奴の声と、数人の足音が聞こえた。
ここもじき見つかるだろう。
前、俺がここに住んでた時は平和だった。
少なくともただの旅人を追うって事はなかった。
いったいどうなんてんだ…。

「ヤマト!」

後ろから女の声がした。
俺は、おそるおそる後ろを見た。

「何だ、ヒミコか」

俺はホッとして、ヘラリと笑った。

「それで? 腕利きスパイは何かつかんだのか?」

ヒミコは、コクンと頷いた。

「今、この世界に大変な事が起ころうとしている。いや、もう起こっているのかもしれない。お前、ミコト知ってるよな?」

俺はミコトという名前を聞いて渋い顔をした。

「知ってるもなにも俺の元同僚だ」
「なら話は早い。そいつが事を起こそうとしてるんだ。この間軍のトップがアレに殺された。ここ1年くらいおとなしかったアレも復活したんだ。もう軍のトップがいないということで、軍はもう崩壊しちまってる。もう戦える奴はいないって事さ。ミコトは、この世界を壊そうとしている。まったく子供じみた奴だよ。今時世界征服何て古いし、はやんないよな」

世界征服…あの欲の強い人が考えそうな事だ。

「それで、お前が追われている理由はアレの制作にかかわったからだ。ミコトは、完全にアレの制作に関わったやつらを殺すきだ。ほら、軍のトップの奴だって微妙に関わってただろ? ミコトは、アレを破壊されたら困るのさ。特にお前はミコトと同じでアレの仕組みについて理解してるしな」

足音が聞こえた。

「いたぞ!! ヒミコも一緒だ!!!」

見つかった。

「逃げるぞ! ヒミコ」

俺は、ヒミコの腕を掴んで走り出した。

「あんな奴ら倒してしまえばいいだろ?」

ヒミコは、俺の手を振り解いた。

「ダメだ! あいつらは前に見た事がある。多分ホシマルの部下か何かだ。あいつの部下が追ってきているって事は、一緒にいるナツキはミコトの居場所を知ってるかもしれないだろ? だから、このままナツキのところに行く」


あの時の俺たちは間違っていたのかもしれない。
世界の為に! 人類の為に! と言ってあんな恐ろしい兵器を作り出してしまった。
たかが戦争に勝つために…。
俺はあの時も前の戦争の時もアレは見ていない。俺はアレが出来る前に途中で抜けてしまったから。
でも、あいつがそのアレなんだ。これはあいつが自分で言ってた事。
あいつはこんな戦い望んでない。だから、お前の好きにはさせないぜ?
あいつは俺のトモダチなんだ。
お前は俺を殺したいんだろ?
だったら自分から会いにいってやろうじゃねぇか。



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