夜の街角


今日の夜、葬儀をする。父のDVで私と母は耐えられなかった。だから、葬儀を夜の街角に頼む事にした。
正直に言うと、父がDVをしているのかは知らない。私は学校に行っているして、父とあまり顔を合わせない。でも、母が私にそう泣きついたのだ。

父を酒で酔わせて、葬儀屋に連れて行くのは簡単だったと母が言っていた。私が家に帰って来た時には全てが片付いていた。
私にとって、父は悪い父じゃなかったし、だから私は母が寝ている間に夜の街角に行くことにしたの。

「いらっしゃいませ、ようこそ。夜の街角へ」

夜の街角に入ると、茶色い髪の女の子が私を出迎えてくれた。
その場で私にルールを説明してくれて、葬儀屋の場所も教えてくれた。私は葬儀屋へと急ぐ。最期に父に会うために。
カランコロンという音がして、私は葬儀屋へと足を踏み入れた。

「いらっしゃいませ」

あたりを見渡すと、金髪の男の子の隣に、父がぼーっとした感じで座っていた。
瞬きをする父。良かった、私は間に合った。

「お父さん!」

私は父に駆け寄ったけど、父は私に見向きもせず、ぼんやりとしている。
おかしいな、お父さんどうしちゃったんだろう。

「大丈夫ですよ。今は薬でこのような状態になっているだけです。僕はチャーリーと申します。あなたは、彼の娘さんですか?」

にっこり笑顔で男の子が問うた。私はコクンと頷く。

「そうですか。あなたに伝えなければならないことがあります。今回の葬儀は中止です。お母様がルールを破りました。今夜は別の葬儀を行います」
「別の……?」

言っている意味がよくわからなかった。父は相変わらずぼんやりしていて。
再びカランコロンと音がし、誰かが入ってきた。聞き覚えのある声。

「お母さん!?」

声の方を見ると、白い眼帯をした白い男の子に連れられて、お母さんがやって来た。

「ちょっと! 離しなさい! 何するのよ!!」

騒ぐ母。白い男の子は、チャーリーと名乗った男の子に向かって、母を放り投げた。一体何が始まるというの?

「さて、貴方は嘘とつきましたね。ボーンさんにはわかるんです。貴方はDVなんて受けていない。 貴方は不倫をして、この方が邪魔になった。葬儀は、自分勝手な奴と思われるのが嫌だったからでしょ? この方が亡くなればお金も入ってくる」

にっこりと笑い、母を追い詰めるチャーリー君。母は壁際に追い詰められた。

「あなたはこっちに。そちらの方も」

白い男の子に手を引っ張られ、私は父と一緒に外に出た。
外に出たと思ったら、父と一緒にいつもの街中に立っていた。母は一体どうなってしまったのだろうか?

「ん? おあ?」

ふと我に帰ったように、父のぼんやりが直った。
まわりとキョロキョロと見ている。私は父の手をとり、家に帰った。母は二度と戻ってこなかった。




葬儀が終わった。女の人は嘘をついていたから、その代償として葬儀された。
嘘かどうかっていうのは、僕が外に行って確かめた。娘さんたちに女の人が葬儀されるところを見せるのは悪いと思って、外に連れ出した。
もうすぐだ。僕にはわかる。もうすぐ朝日が来る。ロウ、やっと足を買えたよ。



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