夜の街角
毎日毎日、マジでいい加減にして欲しい。外の花に水を上げるのはわかる。だが、何でいつもうちの店の前に水溜りが出来るんだ。
もうすぐ朝日だからたっぷり水をあげなきゃいけない? それはわかるが、何でうちの前にいつも水溜りがあるんだ。それが意味わかんねーよ。
「おい。ハナとリーフ。いつも言ってんだろ」
「あ、スケッチ。しょうがないよ。もうすぐ朝日だもん、許してよ」
「いーや、許せないね。ノート店長が優しいことをいい事にお前達は……」
俺は溜息をつく。本当にいい加減にしてほしい。お前達の、この水溜りのせいで売上が減っている。
ハナとリーフは隣の花屋の双子。リーフが男で、ハナが女。今話しているのがリーフ。何てナマイキなガキなんだ。
大体ここのガキはリーフを筆頭に、ナマイキすぎる。マジク、スーに、新入りのチャーリーもそうだ。ガキは嫌いなんだよ。
「まぁまぁ、スケッチ。ハナが怖がっているからそこら辺にしときなさい」
「あ、ノート店長」
俺の後ろから物腰柔らかいメガネをかけたノート店長がやってきた。ハナはリーフの後ろに隠れて怯えている。
あぁ、そうだった。こいつ、人見知りだっけ? 何てめんどくさいんだ。
「そういえば、スケッチ。スーがそろそろ帰るみたいだね。知ってたかい?」
「知ってますよ、店長」
ノート店長が話しを変えた。店長は空気の読める人だ。俺はそこが好きだけど、女じゃないのが残念。
あのスーにだって彼女がいるってのに、何で俺には彼女がいないんだ。
「そういえば、店長。この間のルール違反者、どうしました?」
この間、俺達の店からペンを万引きした奴がいた。
すぐに捕まったけど、何で万引きしたのか言わなかったから、店長が奥の部屋に閉じ込めた。あれから何日かたってる。
「あぁ、彼ね。ついさっき死んだよ。紙の刃に切り刻まれて、細切れになった」
店長は怪しく笑う。あぁ、やっぱりか。
万引きだもんな。普通じゃすまないよな。まぁ、別にいいけどさ。
「紙を甘く見てたってことっすね」
はははと笑う俺。紙の威力を知っていれば万引きなんかしない。まー、うちの店が万引きしやすいってのは認めるけどさ。
隣の店から叫び声がする。ハナとリーフの花屋。ルール違反者が植物の餌にでもされたか。
決められたルールがあって、ちゃんと説明しているのにどうして皆破るんだ? まぁ、どうでもいいけどさ。
「ふわぁ……」
もうすぐ客がくるな。夜の幕開けだ。
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