夜の街角


来る日も来る日も、夜の街角の掃除をしているあたしらは、しがない掃除屋。
ブラッシュはあっちで、あたしはこっち。あんまり楽しい仕事じゃないけれど、色々なことを知れるのさ。

「もうすぐ朝日だけど、チイは飛ぶの下手だからな」
「何よー、スー。私、ここまで1人で飛んできたよの」

噴水の所で話しているスーとチイ。そうか、この2人はもうすぐいなくなる。それがグレイスとした約束だ。
グレイスは朝日が来るまで外に出られないことを知っていたから、朝日が来るまでとスーに言った。その代わり、スーが朝日にここを出て行くのを止めないと。
朝日は不定期に来る。空を見ていればもうすぐ来るってのはわかるけど。
これはスーから聞いた話。スーは雪国に住む世にも珍しい白い鳥だと。その目と羽には物凄い価値があるって宝石店の2人が言っていた。
普通、鳥も冬になると色とかが変ったりするらしいんだけど、スーはそれがない。チイにはあるみたい。
今は2人とも人の姿だけど、あたしはスーが飛ぶのを見たことがあるよ。

「これでやっとロウに謝れるよ」

スーの声。あたしは床をはきながら話を聞いている。
ロウってのはスーの友達。雪の精だって言っていた。それで、太陽とか春になると溶けると。
だけど、スーの故郷は一年中雪。だから溶けることはないと、スーに聞いた。

「ねぇ、ウオッシュ。話を聞いているでしょ?」

スーがあたしを見た。チイもあたしを見た。あたしは何食わぬ顔でゴミをとり、2人ににっこりと笑った。
掃除屋はいつもこうやって色々な話が聞けるのさ。どこにでも入っていけるからね。お客はつかないけど。

「聞こえちゃったんだよ」

スーも、何年もここにいるから、あたしがこうやって話を聞いているのを知っている。
スーは溜息をついた。

「ねぇ、僕達がいなくなったらウォッシュと、ブラッシュが案内人をやるんでしょ? 次の案内人が見つかるまで」

そうだ。スーの言うとおり。掃除屋は案内人がいないとき、案内人もやる。意外と仕事が多いのだ。
ルールを破った人の片付けをすることもある。まぁ、そうか。あたしらの客はここの住人だね。

「そうだねぇ、一つ仕事が増えるだけだよ」

あたしはにっこり笑う。つねに暗い夜の街角。ここの久しぶりの日が昇る。
その間は店はお休みで、街角から出ることは出来るけど、誰も入れない。日が昇っている間だけ、ここの住人を辞めることが出来る。
前の朝日では、2人ここを出て行った。だから、スーとチャーリーが補充された。チイは例外だね。だから数には入らないけど、今回の朝日では1人出て行く。 だから、次の朝日までに1人補充しなければならない。それもあたしらの仕事。
まぁ、いいさ。1日だけ、日が昇る。新しい年の始まりさね。
あたしは2人の話を聞くのをやめ、仕事に戻った。



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