見捨てられた勇者


首都に行ってから数日があった頃であった。クロウの城に侵入者があった。四人の少年達。アガキの話によると、城に入る直前では五人だったらしい。
まだ十代そこそこの少年達。顔には恐怖が滲み出ている。
よく見れば、あの時シロップとともに歌っていた少年達であることにクロウは気付く。あの時は、もっと人数がいたはずだが、ここにくるまでの間に死んでしまったのだろうか。 残った少年達も怪我をしている。

「クロウ様、どういたしますか?」

情報を掴んだアカギがクロウの指示を仰ぐ。

「好きにしていい。僕の所まで来させるな」

クロウは気が気ではなかった。頭にシロップの顔がちらつく。シロップもあの中にいるのではないかと不安になる。
退治しにきたというのなら、身を守る為に戦わなければならない。それに、シロップは自分が魔王であることを知らないはずだ。

「承知いたしました、クロウ様」

アカギは軽く一礼をし、消えた。
今まで城に侵入してきたものは倒してきた。そのたびに、はやり自分達は受け入れられないのだと悲しくなる。
人ではないという理由で母親も殺された。母は何もしていなかったのに。
殺した奴は勇者のパーティーだと言っていた。剣士の男と魔法使いの女。そういえば、一度だけ見たことがある気がする。あの小さな村で。

「何で人はよくて、僕達はダメなんだ」

クロウは唇を噛む。同じ世界にいて、同じように生きている。それだけなのに、認めてもらえない。受け入れてもらえない。せめて、そっとしといてくれればいいのに。

「うわぁあぁあ!!」

突然、叫び声がした。多分、あの少年達の。
名を呼ぶ声が聞こえるが、その声も聞こえなくなる。あの少年達が帰ることはもうない。

「クロウ様、片付けました」

静かになると、アカギが戻ってきた。血はついていない。

「白い髪の子はいた?」

いないことを願いつつ、クロウは問うた。
アカギはそれを不思議に思いながらも、首を横に振った。

「いいえ。おりませんでした」

ほっとした。シロップがいなかったことに。
魔王と人間は敵。ほっとしている場合じゃないのはわかっている。だが、彼には生きていてほしいと心から願っている。
もう会えなくてもいい、ただ生きていてほしいと。トーヤの現実を知らずに生きていてほしいと願っている。



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